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『ガーンジー島の読書会の秘密』リリー・ジェームズはシンデレラを選ばない 公開中

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原題:The Guernsey Literary and Potato Peel Pie Society ★★★★★

英仏海峡にガーンジー島という小さな島があるのですね。

そこは1940年6月『ダンケルク』のあの大撤退の後に、ナチスドイツに占領され、終戦までチャーチルによっていわば見放されることになった島でした。

ヨーロッパで唯一、ナチスドイツに占領されたイギリス領。

その占領下の島で、ふとしたことから立ち上がったのが、The Guernsey Literary and Potato Peel Pie Society という原題の読書会。

Potato Peel Pie ポテトの皮のパイは家畜を没収された、島民の食糧難の象徴なのです。


そして、リリー・ジェームズ演じる主人公ジュリエットは、

『ダンケルク』の後、ガーンジー島占領の後、ロンドン大空襲で両親をうしなっておりました。

戦後、ガーンジー島の読書会のメンバー、ドーシーと、これまたふとしたきっかけから文通が始まり、作家であった彼女は、その島に、そして読書会に興味を持っていくのです。


やっぱり想像していたように、大好きな物語でした。

しかも、よく言われているように、リリーにジェシカ・ブラウン・フィンドレイ、マシュー・グード、ペネロープ・ウィルトンという「ダウントン・アビー」同窓会状態な上に、「ゲーム・オブ・スローンズ」最終章に再登場してデナーリスを助けて欲しかったのダーリオ・ナハーリスことミキール・ハースマンもおります。


戦時中から時が止まった島に、華やかな戦後の空気をリリーが運んでくるのは「ダウントン」で演じたローズと同じなのですが、

若々しさいっぱいのローズとは違います。明るい笑顔が印象的なリリーですが、トラウマや心痛を表現するのもとてもうまい。

もちろん、シンデレラでもありません。リッチなアメリカ人兵士と結婚し、シンデレラになることを、彼女は選びません。

加えて、戦中にガーンジー島を飢えさせたのはチャーチルの政策だったと知り、リリーが『ウィンストン・チャーチル』(Darkest Hour)のタイピストを演じていたこともあって若干複雑な思いも…。

極めて現実的な判断を取ったのかもしれないけれど、一見のどかで風光明媚な島は大きな犠牲を払ってきたことが、少しずつ明かされていきます。

そのうちの一人といえるのが、読書会の発起人エリザベスでした。本作をミステリー仕立てにミスリードしているのは、ジュリエットがこのエリザベスになかなか会えないからなんですよね。。

エリザベスを演じた

ジェシカ・ブラウン・フィンドレイといえば、「ダウントン」の三女シビル。今でも秒で泣ける、シビル。

「ダウントン」では入れ替わるように出てきた2人だからこそ、時を超えた“再会”をよりドラマチックに見せてくれました。

もちろん、本や読書で救われたことのある人にとっても愛おしくなるに違いない作品です。


また、書きたいことが次々にあふれ出てきて、書きたくてたまらなくて、時がたつのも忘れてしまうくらいの衝動に駆られる、タイプを打ち続けるリリーもとても美しかった。

中盤ちょっと語りすぎ、とも思いますが、みんな好きな俳優さんだからなのか、本来苦手なのに許せてしまう。それこそがミステリー(?)でした。

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