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#51 脱ノルマ×週休3日×食べまくり旅…“楽しい会社”づくり?/北一ミート株式会社 田村健一さん #BOSSTALK(廣岡俊光)

 北海道を愛し、北海道の活性化を目指すボス達と北海道の未来と経営を楽しく真剣に語り合う「BOSS TALK」

 ゲストは「北一ミート」株式会社 代表取締役・田村健一さんです。

<北一ミート>1979年札幌中央卸売市場の一角で創業。食肉の中卸業者として牛や豚、鳥、羊、エゾシカなど1日9トンの食肉を飲食店や学校、病院をはじめとする約1500もの取引先に提供しています。現在は、食肉卸をはじめ、飲食店経営や札幌クラフト生ハムを中心とした加工食品の製造にも力を入れ、食肉業界のトップランナーを目指しています。

 営業ノルマを撤廃し、週休3日制を導入して、売り上げをアップした田村さん。社員の意欲を高める方法をうかがいました。


■ 厳しい父への反発と尊敬

―― 食肉業界に入ったきっかけは

 父が肉屋を経営。その姿を見ていましたし、母親に「肉屋になるんだよ」と言われ育ちました。高校を卒業したら"肉屋になろう"と決めていました。

 創業者の父は会社のためなら命も削れる人。厳しい人で私も含めて社員にも厳しくあたる。平成の私と昭和の父と間にはギャップがありました。

 師として仰ぐひとに相談すると、父の一挙手一投足を見てと言われました。よく見ると階段のごみを拾ったり、神棚の水を取り替えたりしている。

 父親の働いている姿を追うにつれ、父親の尊敬できる意外な一面に気づくようになり、お互いのコミュニケーションが増えました。そして2019年の正月、実家で過ごしている際「そろそろ社長やってみるか」と言われ、お受けしますと答えました。

■ ステーキ旅、脱ノルマ、週休3日制

―― どう会社を変えかじ取りを?

 まずは"営業ノルマ"を撤廃。現代では、仕事そのものが楽しくないと過労につながる。イヤな上司・人間関係、それとノルマ。これらが仕事を辞める最大の原因と思ってました。

 楽しい会社づくりをしよう。どれだけ楽しければ、勢いが良くなるかなという実験でした。

 社員に東京へ行きステーキを食べておいでと指示。「まずいステーキとうまいステーキを食べてこい」と。

 1泊2日でステーキを食べまくる旅。まずい店もある。何が原因なのか考えることにも。

―― そのほかの取り組みは?

 仕事の楽しさを求めるのと同時に時間の縮小にも力を入れています。「週休3日制」を導入。社員のプライベートの時間を充実させてほしいという思いから。売り上げはおかげさまで伸びている。数字にも出ています。

 2018年に"夢の社屋"を建てました。温度を一定したいなど希望を全部詰め込んだ社屋。社員もモチベーションもあがったと思います。「うちの肉おいしいんです」と自信もって営業へ行ける。社員も楽しそうに仕事をしていますね。

―― BOSSとして大切にしていることは?

 「社員全員幸せに」。これが1番大切。社員を不幸にする会社はダメだと思います。日頃から大切にしています。

 人事評価制度は特にありませんが、人を幸せにできる人に上司になってほしいといってます。私も含め一緒に育っていきたいです。

■ "生ハム"を札幌の食文化に。

――いま力を入れている事業は?

 今や会社を代表する事業の一つとなっているのが「生ハム作り」です。趣味でかれこれ17年作っています。

 なかなかハードルが高く保健所の許可も下りにくい。生産性もよくないので会社をあげてやろうとは思っていませんでした。

 宴会向けに、テリーヌやパテを販売していたがコロナ禍で宴会がなくなり、総菜工場の売り上げが95%ダウン。社員が出社させられないときに、そういえば生ハム作れたんだと思い、始動させました。

 シンボリックな仕事になっています。1本つくるのに1年かかります。500本つくっても500本しか流通させられない。

 2023年1月、スぺインで生ハムづくりを視察したのですが、季節変動を工場内の中でコンピューターで制御していました。学んだことを札幌で生かし、札幌でしか作れない生ハムを作ろうと決意しました。

 「サッポロクラフト生ハム」を札幌の食文化の一つにしていきたいです。北一ミートオリジナルブランドではなく、作りたいという他の生産者が現れたら、いっしょにつくっていきたいです。


■ 編集後記

エネルギッシュ。田村さんの第一印象です。従業員のためになることは次々と導入し、楽しい会社作りのための改革をどんどんと進めています。

また「サッポロクラフト生ハム」の話をしている時の楽しそうな表情は、ご自身の夢がつまったこの事業を、会社の“顔”の一つにしていこうという思いに溢れていて、私も聞いていてワクワクしましたし、つい話が膨らみました。

北一ミートだけのものとして囲わず、皆で札幌のあたらしい食文化を作るという大きな野望を、これから微力ながら応援したいと思いました。


<これまでの放送>

#50 【株式会社komham】代表取締役 西山すのさん

#49 【株式会社 創伸建設】代表取締役 岡田 吉伸さん

#48 【株式会社 光映堂】 代表取締役 関山亜紗子さん