1.白妙菊【しろたえぎく】
白い息が絶えるみたいに、
穏やかになっていく貴方の、
その色が消えるまで隣に。
冬は世界が眠いっていて、私達も生命力を低下させる。
寒い。
自らの両腕でこの身を包んでは、そう呟くのだろう。
それでも私は、夏を恋しく思うことはなかった。夏が嫌いだった。
ここは静かだ。
空気が澄んでいる。真っ白な雪が灰色になってもまた塗り替えられて、いつの間にか白銀となったこの世界に、色も音も吸い込まれて消えていく。貴方を包み隠すものまで真っ白になっていくみたいに、世界を均(なら)してくれる。どこまでも不透明で、誰もが眠るこの季節が、私はたまらなく好きだった。
これは祈りだ。
まだ、貴方の吐息が鮮明に聞こえているうちに、貴方のそばにいたいと、そんな利己的な執着で私を縛って。何も変わらないままで。
私は貴方と灰になりたい。