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あの日、花瓶を割ったのは

*神様に愛されたい少女サラの生前の話。
*ベルと出会う前


ある日私は、クラスにあった花瓶を割ってしまいました。
それは、ちょっとした不注意でした。
私は躓いて転んでしまい、その時に肘が当たってしまったようです。

それは、クラスの子たちが毎日手入れをしている花を入れていた、大切な花瓶でした。

私は、“悪いこと”をしてしまったのです。


騒ぎを聞きつけて先生がクラスに入ってきました。
そこには、床に座り込む私と、割れた花瓶と、それを見ていた数名の生徒がいました。
私は怒られると思いました。

すると先生は、「何をやっているのですか!答えなさい!」と、クラスの女の子を怒りました。
私とも、割れた花瓶とも無関係の距離にいたその女の子を、きつく、きつく怒鳴り始めたのです。

私はとても驚きました。
「先生、花瓶を割ったのは私なんです」
そう、私が言うと先生は、
「ああ、サラ、貴方は“何も悪くない”のよ」
と言いました。

そして、私の怪我を心配するように先生は、私に駆け寄って、私を抱きしめたのです。

そこにいた誰もが困惑したはずです。

だけど私は思い出しました。

私は、怒られたことがなかったのです。

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「ねぇ、神様。貴方の幸せとやらはひどく歪んでいるようね。これは一体どういう趣向なのかしら。私のせいで不幸になる人を尻目に、私に、幸せを歌えと言うの?」


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一度だけ、サラを否定した発言をした子がいた。
その子は、翌日交通事故で死んだ。

サラはもう他人を認識するのも疲れて、“みんな”の前でニコニコしながら生きていた。
幼馴染の男の子とは、それなりに仲良くしていたけど、所詮はただのおままごと。

でも、“誰かさん”はきっとこれで満足してくれる。
そうやって、波風立てずに平和に生きていく。

そう、思っていたのに、1人の青年に出会った。
彼は不思議な人だった。
見たこともないほどに真っ黒な何かを持っていた。

私は、“悪い子”にはなれないのに。

……なれないから、惹かれたのかもしれない。


前世サラ【七つの大罪の物語】
神様に愛された少女。透明。
この世の幸福を押し付けられて生きる少女。
神様の善意に背くことは許されない。