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小夏と千秋

 
 小夏は、辛い人生の中で、世界にも他人にも期待しないし興味もない感じで生きてきたから、何だかんだ言いながら世界や現実に抗おうとしている千秋に笑いかけた。君は頑張ってて偉いね。ちゃんと生きてるんだねって。そう笑った小夏のことを、千秋は好きになった。

 千秋は、世間的に言うとチャラ男みたいなポジションなので、友達や知人は多くいたけど、信頼できる友達っていうのは司くらいしかいなくて。まあ、腐れ縁みたいなやつだけど。だから、諦めたように笑いかけられたこともなかった千秋にとって、小夏は異質だった。

 小夏は、自分のことはどうでもいいと思っているくせに、他人をよく見ているようだった。客観的に見るのが上手というか、千秋が心のどこかに寂しさを感じているのを理解して、笑いかけていたようだった。

 彼女は、夏の寂しさに似ていた。演じていた。分かっていた。

 そして、彼は依存した。

 夏は自分勝手に命を吹き込むね。その命がどうなったって構わないと思っているね。たった数日しかない余命を使い尽くすほどの火照りの中に、きっと、夢を見ていたんだ。輝いて見えた。憧れだった。その背中しか見えなくても、丸裸になって汗をかいた心が、“さみしい”って、言っていた。

 真っ直ぐ上を向いていたひまわりが枯れる頃に、人は寂しさを感じる。秋は、君の撒き散らした寂しさを回収する季節になってしまった。それが存在意義なんだとしたら、いつまでも、君は、寂しくなくてはいけないね。

 「ひまわりの数だけ、君が死んだ」