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それで、空を見た。




今日退勤する前、
窓にちらっと目をやると、
街の端の方が赤く染められていた。

最近買った保温ボトルを洗いに行くついでに、違う方角が見える廊下の窓のところへ。

色彩のもと。
周りより少し高いビルの後ろで、雲が一面に広がった夕方の空。沈むようなあか。
綺麗だ。

空は色んな表情を見せてくれる。色んな雲が泳いでいく。

頭上に、彼方に広がっている。
ひとつ空の下って、よく聞くしね。

もっと幼い頃は、同じ空を見上げている誰かが、空の向こうにいるのかなと、ロマンチックなことを考えてたりした。
ロマンほど贅沢な不用品ってないなって、つくづく思ってしまう、嫌な大人になったのかな。

だからこそロマンのあることをしようとは思っているよ。

いつかの夏の夕日、
寝ぼけて起きた目に映った空が綺麗で綺麗で、時が進むにつれ、変わっていくのが、
急にとてつもなく寂しく感じてしまった。

それで、生まれてくる雲や色に、死んでいく形や光に、もう2度と会えない恋人に宛てるような、
ラブレターらしきものを書いてみたりした。


>>>君は止まらない、僕は乗れない。


いつから空を眺めるようになったのか。
別に何か探しているわけでも、求めているわけでもないんだ。
それで、こっちから何か渡すつもりもないんだよな。

ただ、見たい時には見ることができるし、見たくない時には見ないで済むからか。『風の歌を聴け』で鼠がそんなことを言っていた。
でも、見たくない時なんて、いままでになかったよ。いつだって見たい時に見上げたし、見たいのに見れない時は、窓やらドアやらを探した。

高校のとき、3年間連続で窓際の3番目の席だった。教室は変わっているのに。
社会と歴史以外(ごめんね、苦手なだけだよ)、授業を聞くこと自体好きだったから、ちゃんと受けていた。受けていたが、窓の外をいつも眺めたりしていた。

していたりした。
してたりした。
したりしてた。


空が綺麗だなって、思って終わる今日で、
それでよかったんだって。

それでよかったんだ。

それで、空を見た。

今日の朝、間に合わないのに携帯のカメラで。
雲、寝起きの青、光、反射、陰、ビル。
それらが四角い「ひとつ」を成す。
撮った後は駅まで全力。
退勤直前はもう、すっかり暗くなって、
でもカーテンが遮っているところに月が。



2024.1.23   星期二   晴れ

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