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病室に散りばめられた真珠の殻




病房的怎么通?奇怪的是,他们说的一切都像珍珠壳。

(病室のことばはどう疎通をはかる?可笑しいのは、彼らのことばは何もかもが真珠の殻のよう。)
(“珍珠壳”真珠の殻というのは、真珠を孕む貝の殻のことである)

どこかのアプリで翻訳機能がついていて、書いた何かの文の下にある「自動翻訳」ボタンをを興味本位で押してみたら、このとんでもない中国語の文章が現れたわけ。

僕はあまりAI翻訳というのが好きじゃなくて、
それはまあ、僕が意訳と直訳の間で迷いながら、細かいニュアンスの表現と言葉選びに苦しめられながら作っていく翻訳を、何を1,2秒のローディングでそれっぽいいい感じの訳を作ってんだという、決してAI翻訳に対する差別ではなく、むしろ好意的な敵対心を剥き出しているのである。
あと、なんていうか、機械じみているのにもかかわらず、その機械じみた、感情のない翻訳はたまに、人間には出せないようなセンスを感じさせる。
全く可笑しな話だが、僕は多分その機械にしか出せない面白さか何かに嫉妬している。

ちなみに、僕が書いた原文には一切病室だの、真珠だの、殻だのは出てこないのだが、何をどう間違えればそういう「翻訳」になったのかが全くもって見当つかない。もはや訳でもなんでもない。自動翻訳機能が私が入力したコードをもとに、自らの意思で作り上げた別の何かでしかない。
ただこうして書き残しているということは、僕がこの訳をとても気に入ったことも言わずもがな察してくれるだろう。

CIKIの「사이」(Between)の和訳を見て思わずこのわけのわからん訳を思い出した。 歌詞の和訳を見る前はまったくもってそういう歌詞だとは思わなかったのだが、というか、意味を知らずにたぶん3年以上聴き続けているのだが、知っているか知らないかで聴きごたえが180度違うように感じられ、ことばというのはやはり面白いなと一人で勝手に納得した。

この曲と歌詞のマッチは、きれいに粉砕され、地面にちりばめられたような憂鬱が心地いい。さわやかな闇というか、狂気というか。
まるで、
開かれた窓と靡く白いカーテンを背に、どこか優しいようで恐ろしい笑みを浮かべて立つ男の子を目にし、看護師は病室のドアの前で立ち竦む。ドアの隙間から廊下の騒々しさが微かに聞こえる。
そういえば、この病室にまつわる怪談をつい最近お昼休みの時に同僚から聞いた。いや、彼女は何か決して忘れてはいけないことを忘れている。
それに気づいた瞬間、膝がガクッと地面についた。
そこで初めて地面には白い殻が散りばめられていることに気づき、血が流れないことを疑問に思う女は、男の子には、ただただ夜の明かりを反射する真珠として眼に映っている。

などと言っているうちに、自分のことばが砕けた真珠の殻のように思えてきたので、ここらへんで。


2023.12.1  星期五  晴れ

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