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【36】音楽の話6:マーラー「大地の歌」の名演 オットー・クレンペラー指揮フィルハーモニア管弦楽団 2022.6.14

 僕がこの曲を聴いたのはまだ高校生の夏休みのある日だったように思います。試験勉強をしていたのかなんだったのか、寝るきっかけがつかめずに夜中起きていて、気付くと夜は明け始めていました。窓を開けると外から涼しい空気が流れ込んできました。このときふと、しばらく前にエアチェックして録音しておいたテープを思い出してかけてみたのがこの「大地の歌」でした。

 冒頭から心奪われて最後まで聴き通してしまったあの夏の朝のことを今も懐かしく思い出します。

 今回「大地の歌」について調べ直してみて、なんてこの曲には名演が多いのだろうと思いました。ワルター、バーンスタイン、クライバー、シューリヒトさん、昔だったらこのうちどれかを持っていたら十分満足しきっていたであろう、どれもが押しも押されもせぬ演奏でした。

 そんな名演を聴いた後で、クレンペラーさんの演奏を聴き直す時、実は記憶の中で美化しているだけでほんとはたいしたことなかったのではないかと思いながら聴き始めたのですが、驚きました。その演奏は前記名演を凌駕する最高の名演だったのです。クレンペラーさんの指揮、フィルハーモニア管の演奏、テノールのフリッツ・ヴンダーリヒ、そしてなんといってもメゾ・ソプラノのクリスタ・ルートヴィヒさんの歌唱の素晴らしさ、すべてが溶け合った、安易にこんな言葉を使いたくありませんが完全無欠な至高の演奏だと思います。

 世の中には、マーラー派とブルックナー派がいると言われます。 私は完全にブルックナー派なのですが、この曲と演奏は素晴らしいと思います。

 それにしても、こんな演奏を簡単に聴き比べられる時代が来るなんてすごい時代になったものだと思います。ユーチューブ、そしてこれらの演奏をUPしてくれている皆様に感謝いたします。


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