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あんときのデジカメ 弱みを逆手に取った創意工夫 「写ルンです」+富士フイルム X-Pro1

(はじめに)久しぶりになりますが、あんときのデジカメです。今回は番外編的ですが、写ルンですのレンズを再活用したGIZMON Wtulensで、厳冬から初春への季節の変化をスケッチしてみました。創意工夫とはどこから立ち上がるのか? それを考えるヒントになるかも知れません。

諏訪式。

 セイコーエプソンや三協精機、チノンといった大企業も、その始まりは、「味噌蔵」「製紙工場」「寒天工場」といった、かつて諏訪に栄えた産業の「遺産」を土台として生まれている。
(出典)小倉美恵子『諏訪式。』亜紀書房、2020年、13頁。

 先日、たまたま手にとった小倉美恵子さんの『諏訪式。』(亜紀書房、2020年)が抜群に面白く一気に読み終えました。詳しくは本書に譲りますが、長野県の諏訪地域は、セイコーエプソンなど世界的な精密機械工業が誕生し、現在も世界を牽引する産業として盛り上がっています。

 そして精密機械だけでなく、岩波書店やみすず書房など日本を代表する出版社の創業者を生み出した地域としても知られていますが、こうした快挙の秘訣を著者の小倉さんは、自主独立を旨とする「百姓」が、外から来た近代科学や学術を受け入れる一方、自らの地域や風土と向き合い、その両者を結びつけたところにあると指摘しています。

 「納屋工場」とは、農具などをしまう納屋に旋盤などの工作機械を持ち込むことをいい、昼間は野良仕事や漁労をし、夜は機械工作の下請けを行ってきた「半農半工」もしくは「半漁半工」の人々がいたことを物語る。
(出典)小倉美恵子、前掲書、14頁。

複数のなりわいをもつこと

 昨年から本格的に地域再生のお手伝いを始めているのですが、この小倉さんの指摘する「半農半工」あるいは「半漁半工」という生き方は、複数の「生業(なりわい)」をもつことが、創造の出発点にあったことに、僕は瞠目しています。

 ひとつの会社に所属してそこからの収入だけで生活するというライフスタイルが20世紀に確立され、そしてそれが高度経済成長を支えてきたのは事実です。そしてそれが今なお社会のメインストリームとなっています。

 しかし、産業形態の変化やコロナウイルス蔓延にともなうライフスタイルの変化とビジネス環境の変化は、全日空やみずほフィナンシャルグループに見られるような副業の解禁といった方向性は、現実には、会社が従業員に給与を保証できないという直接要因は実在するとしても、ひょっとするとそこから、新しい可能性も生まれてくるのじゃあないのか知らんなどとも考えています。

 田舎で暮らしていますが、積極的な半農半Xの生き方とまでは言わないまでも、例えば、農業を取り巻く環境では、兼業ではなくても、複数のなりわいに関わりながら事業を継続しているスタイルが多いことを参照するならば、そうしたないと生計が成り立たないという消極的評価だけでなく、何らかの可能性の発露となりえるといった積極的な評価も可能じゃないのかとも考えてしまいます。

弱みを逆手にとる創意工夫

 というようなことを考えながら、最近手にとったのが1986年発売の富士フイルム「写ルンです」のレンズを再利用したGIZMON謹製「GIZMON Wtulens」です。贅沢にも「写ルンです」のレンズを2枚使ったミラーレスカメラ用のレンズで、35mmフルサイズですと17mmという超広角レンズとなります。とりあえずaps-cの富士フイルムX-pro1につけて使用してみました。

 富士フイルムのレンズですから、やはり富士フイルムのデジタルカメラに接続するのが流儀というものです。

 思えば、本格的にカメラを始めたのは、ライカのIIIfを手に入れた1992年ぐらいのことで、それまではCanonのレンジファインダーカメラを時々使っていましたが、やはり便利だったのは、「写ルンです」。カメラを持ち歩かなくても、コンビニでもどこでも売っていた手軽さで、僕ぐらいの世代の方であれば一度は使ったことがあるのではないでしょうか。

 当時はオートフォーカスカメラの熾烈な競争の時代であり、フィルム自体がどんどん売れていた時期でしたが、フィルムに付加価値を付けてヒット商品を作るなんて粋なもんだなあと思ったことを覚えています。

 さてスペックですが、単焦点 f=17mm F16 (絞り固定)のパンケーキレンズとなります。当時ロシアのライカクリューマウントRUSSAR20mmを使っていましたが(現在は手放して持ち合わせていません)、これの開放f値が5.6で暗いなあと思っていましたが、それ以上の暗さですよね、「写ルンです」。ただしこの暗さのおかげで被写界深度が深くなり、いわば「テキトーに合焦」してしまうという寸法ですね。

 まあ、ものは考えよう。弱みを逆手に取ったことがイノベーションを創造してしまったということです

 諏訪式や複数のなりわいといったライフスタイルもひょっとすると「写ルンです」的挑戦と交差してしまうのじゃないの?と思ってしまうのは僕だけではないかも知れません。

 以下、作例です。周辺光量落ちと周辺画像の流れがものすごいのですが、まあ、「味がある」ということでどうでしょうか。APS-CのX-pro1に装着していますので、35mmフィルムカメラ換算で28mmとなります。

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ということで撮影データ。露出優先オートで撮影、ISO200、ホワイトバランスオート、露出補正なし。撮影は2021年2月1~10日。撮影場所は香川県仲多度郡多度津町、善通寺市、三豊市。


氏家法雄/独立研究者(組織神学/宗教学)。最近、地域再生の仕事にデビューしました。