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【感想】「リーディング音楽劇 ジャングル大帝」

 東京建物Brillia HALLで公演された「リーディング音楽劇 ジャングル大帝」に行ってきました。
 音楽劇なるものは「観に行った」と言うべきか「聴きに行った」と言うべきか分からず一文目の表現となるくらいには初心者である。というか初めて。今回は2日間3公演あるうちの真ん中、6/5 12:00~の昼公演でした。

開演前

 開場10分後くらいにホールへ入ると、行列を為す群れとすんなりガラス壁の向こうにあるチケットもぎりへ向かう人々とが見える。「お?お?」と戸惑っていると、行列は電子ポスター撮影のための列だという。まだまだ開演まで時間があったので列に並んだ。

並んで撮った電子ポスター


 客層を見ていると20~30代くらいの女性が多い印象。キャストさんのファンの方が多いのかな。しかし手塚作品の中でも一般的に馴染みのあるタイトルだと思うし、原作やアニメのファンとして来た人も多いのかもしれない。私も演目でつられてやってきた者なので、恥ずかしながらこの公演を知るまで存じ上げていたのは入野さん、あと太田さんのお名前はなんとなく…くらいでした。

 声優さんの「朗読に出演します!」という告知をよく見かけるがそういうのには(行ったことがないので分からないが)台本を手に並んで座り、しっぽりと語りだけで魅せる…みたいな印象があった。しかし今回の音楽劇には歌やダンサーによるダンスが入るというではないか。ますます想像がつかない未知の世界にドキドキワクワクしながらパンフレットを買って席に着いた。
 ここで初めてまともに配役を確認したのだが(すみません)、えっレオ役4人??どういうことだ?日替わり公演だっけ…いやそんなこと書いてないな。あとめっちゃ役兼ねてるな。どのキャラが喋っているのか聴いてて分からんくなったらどうしよう。疑問と不安が残ったがのちに杞憂であったと分かる。
 幕は上がった状態で舞台上が見えた。中央の丸いステージを半弧で囲むように椅子が並んでいる。なるほどあそこにキャストさんが座るのだな。そして中央の丸いステージの左右にはさらに一回り小さな、同じようなステージが据えてある。ダンサーと思しき人がウロウロしていたのでおそらくあそこでダンスが繰り広げられるのだろう。舞台の奥のほうには楽器のセットがずらりと並んでおりアーティストのライブを思わせる。
 そうこうしているうちにキャスト陣が登壇してくる。普段こういうホールに来るのって演劇を観るときが多かったから、袖から現れファンサしながらの登場が新鮮だった。

開演

 「はじまり」という歌を皮切りに劇が始まる。
 記憶力よわよわなのでもしかしたら脳内補完してる部分があるかもしれません…。話の流れについてはほぼ原作通りなので割愛します。また、あくまで個人的嗜好に基づいた感想であることをご承知おきください。当たり前のようにネタバレあります。

 朗読とは言っても劇である。台本を手に中央の丸いステージで、その場面にいるような所作を繰り広げる。レオが母エライザに「おまえはこの檻を出られるからお逃げ」と促されるシーンでは「うん!ぼくこっちから出られるし、そんで今度はこっちから入れるよ!でまた出られるよ!」とぴょんこぴょんこ縦横無尽に(辰巳さんが)駆けずり回るのは可愛くてニッコリしちゃう。

 この辺で、ああ4人のレオ役がパートごとに演じて、レオじゃないときに他の役やるんだと気づく(おっせ!)。その際は帽子などの小道具を着けてくれるので誰か分からなくなることはなかった。むしろ小道具をサッと付け替えて一瞬でキャラチェンするのがある種の盛り上げ要素だなと、笑いに誘われながら思った。

 梅田さんメリーの鼻につくような声色や喋り方が解釈一致…!!ただ気取ってる高飛車な感じじゃなくて良い意味での雑さも兼ね備えていて。手塚作品には時々いるけど、はねっかえり系のヒロイン好きなんですよ。そのなかでもメリーは過激なほうだと思うんですけどね、ジャングラ族に捕えられても昔の仲間と再会しても泣き言ひとつ言わずに女王として振る舞うの相当メンタル強い。そういう部分も声で見事に表現されていてハマり役だなーと思いました。

 そして太田さんケン一くん。高めながら少しざらっとした声が十代の男の子という感じがして良。優しい語り口調にケン一くんの性格が表れていて、嗚呼これが可視化ならぬ可聴化か…!と耳福でした。レオとの「一人と一匹」というナンバーがとても素敵だった。異国で馴染めない境遇の中でレオと出会って、似た者同士だねっていう、少しのやるせなさとちょっとした希望を感じさせる。内容を分かっているのかいないのか、レオが「アオッ、アオーン」て合いの手入れるのめちゃ可愛かった。

 今回入野さんココはナレーターというか、狂言回し的な存在なんですね。確かにココは仕切り上手のイメージがあるし、声優キャリアの長い入野さんにはピッタリかもしれない。しかしながら劇にもしっかりと参加していて、クスッと笑ってしまうような場面は某六つ子アニメを髣髴とさせる…!

 辰巳さんは先述の通り幼少レオを演じてるんですが、その可愛らしさとハム・エッグというおじさん中のおじさんを演じるギャップがすごい。あのハムさんすごい好きな感じでした。

 次にレオを演じたのはドンガ族の村長役をしていた松崎さん。なんとのちにライヤも演じる。かぶりものをとっかえるのに忙しそうだった(笑)。少年期レオ時は人間界と獣界での葛藤という、物語の根幹とも言える部分を演じられていました。ライヤ時はレオとのちょっとしたノロケもあったけど、男性キャストペアということもあってかコミカルなシーンとなっていて面白かった!

 次なるレオは福田さん。ジャングルの王としての自覚と誇りを持ち始め、成長していく姿にホロリ…でもオーケストラの名前が思い出せなかったりするおとぼけっぷりも健在で可愛かった。ヒゲオヤジも演じられていたのですが、こっちも可愛い。ヒゲオヤジのおじ馬鹿っぷりが本当に好き。ケン一第一なところ…!!!あとブブに一瞬で○される迷子のイノシシ役、笑っちゃいけないけど出てきたときすんごいフガフガ言ってて笑ってまうよね…w

 最後の越岡さんレオは立派に大人になって父親にもなるわけなんですが、ブブと戦うシーンは一番笑ったかもしれない。ブブも越岡さんだから一人で右向いて左向いて戦いを表現しておられました…。すごいw

 ダンドイ舞莉花さんはエライザとリョーナ役でしたがとてもお声と抑揚が綺麗。良妻賢母…という表現はちょっと時代に合わないかもしれないけど、理知的で優しい女性の演じ方が素晴らしいなと思いました。

 なんだか笑いどころと萌えポ紹介みたいな文になってしまったんですが、演出もそれはそれは良くて…!!

 ダンサーはホナガヨウコさん、池田さんの二人だけなのにダイナミックな動きは圧巻。声の担当の方もキャラクターの動きをするにはするんですが、アートとしての動きはダンスに委ねられていたように思います。雪が降る美しい情景や、戦いの緊迫感など、言葉だけでは説明しきれない部分を「あ、ここはこういう場面なんだな」と観ている人に分かるように、かつ魅了させるようなダンスでした。

 音楽も同様で、生演奏の迫力に加え浦嶋さん、小林さんのコーラスが合わさることでアフリカの壮大なイメージが掻き立てられました。日本人の多くはアフリカに行ったことがないと思うのだけど、「アフリカといえばこんな雰囲気」というイメージはなんとなくあると思う。楽器や発声にそういった要素がふんだんにあって、「らしさ」を盛り込むという意味でテーマに相応しい演出になっていたと思います。

 小道具としては、キャラクターを表す帽子や耳等ほかは白い布くらい。ダンス・芝居兼用でほんとにこれだけでいろんなものを表現してたんですよね。道具も空間もかなり限られた中でこれだけのことができるってすごいなぁ、可能性っていっぱいあるんだなぁ、となにやら壮大な思いに耽るなどした。

 プロデューサーの江口さんと音楽担当の岩崎さんのアフタートークで知ったのですが、この企画自体今年に入ってから立ち上がったそうで。正味半年も無いでしょうにここまでできるの!?とびっくり。音楽も2週間くらい?しか時間が無かったとかで……。「どうやって演奏者を選んだの?」との問いに「(スケジュールが迫ってるので)空いてる演奏家を……」というリアルなぶっちゃけ話には会場みんな笑った。いやそりゃそうだ!だし実現できたのがすごいよ!!
 ただでさえ稽古時間が短いため主体である朗読に支障が出ないように歌はキャストさんの音域に合わせて作ったとのこと。やさしいしすごい…。

 この音楽劇のキーワード「始まりであり終わり 終わりであり始まり」。
 物語は原作のラストまでは描かれず、ルネとルッキオが生まれて新たな生命の息吹を感じさせながら幕を閉じます。
 また、メリーもケン一とともに日本へ帰る決心をしたところが最後の出番となっていましたが、もー早く教会持って来い!と未来に思いを馳せてニヨニヨしてしまいました。
 ジャン大に触れるたび、自分と他者それぞれの世界ってモンがあるんよなぁという気持ちになります。なんかめちゃ全肯定の感想になってしまったけどもちろん違う感じ方をした人もいると思います。嗚呼それすらもジャン大…!

 もっと書くべきことなかったかなと思いながらもう記憶と語彙力の限界のためここらで終わります。乱文ですみません。ありがとうございました!

 


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