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氷山(水山蹇)

易経39 水山蹇(すいざんけん)
彖に曰く、蹇は難也。剣前に在る也。険を見て能く止まるは知なる哉。蹇は西南に利しとは、往きて中を得る也。東北に利しからずはと、其道窮する也。大人を見るに利しとは、往きて功有る也。位に当たりて貞にして吉とは、持って邦を正しくする也。蹇の時用大なる哉。

水山蹇は、四大難卦のうちのひとつ。
易をやる人なら、この卦が立ったと分かると、ぴくっと一瞬時間が止まるような卦。

蹇は、難しい漢字なんだけど、「あしなえ」といって、足が捕らわれて前にも後ろにも勧めない様子。
この卦を景色にするのなら、氷に覆われた険しい山の中で、もう上に登るのも、下山するのも難しい、そんな状態のことである。

寒いという漢字の下の部分。にすいは、氷、固体のを指す。にすいの漢字は、凍、冷、冬、凅など。
点がもう一つ増えて、さんずいになると水を表す。海、湖、河、汁、涙…液体となる。

緑が繁茂した頃だっただろうか、私のひとつの問いに対して、卦を立てた。

算木という、6つの木の棒を投げて、自分から近い順に積み重ねていく。
陰、陰、陽、陰、陽、陰。
卦の形を見て、ハッと息をのんで、ふっと笑って「水山蹇」だ!と声に出した。

この卦を立てた時は、6人で集まって、読み解きシェア会という勉強会みたいな場だった。
みんな易を学ぶ同志なので、難卦が立った私を見て、笑った。

氷山に閉じ込められて、前にも後ろにも進めない。八方ふさがりで二進も三進もいかない。そんな時は、退いて守って時を待て。それでも苦難が続くのは、どうしようもない運命だから、受け入れて鍛錬せよ。
そんなキーワードが頭を駆け抜ける。

席に着くと、主宰である友人がさらに卦を読み解いてくれる。

「登ろうとしてる山が違うんじゃない?」

一瞬、え?と頭が停止する。
易は、「問い」と「答え」がワンセットである。
厳密にはそうではない時もあるけれど、基本的にはそう。

私が時空に放った「問い」に対して、算木を投げて、卦が立つ。
目の前に現れた氷山をどう攻略するのか(せずに雪解けを待つのか)という話ではなく、
『いや、そもそも、登る山がそっちじゃねぇ』って言われたってことだ。

その視点はなかった!!

そもそも登る山が違うということであれば、そりゃ、二進も三進もいかなくなるから、「水山蹇」で間違いない。目指してるところがちがうんだもの。

易の教えてくれるところは、「兆し」だ。
私が昇ろうとしている山は、氷山だけど、本当にくるのか?って突きつけられたってことだ。

もう、この時点で、私の中では、雪解けが起こったと同じだった。
39水山蹇の次の卦、40雷水解は、冬から春に場面転換が起こり、固くなったものが解けていく象。

友人の読み解きを聞いているうちに、私にも雪解けが起こり、それは涙となって流れた。
頑なに、にぎりしめて、くちゃくちゃになった想いと一緒に。


がんじがらめに縛っているのも、結局は自分なのだ。
いつの間にか、するっと伸びてきた糸に絡まれているだけで、瓦解するときはする。
しばれる冬から春への転換は、一年の中で一番ドラマチックだと言っても過言ではない。
モノクロから極彩色の世界へ。


この日から数か月経ち、もう、楽勝なもんよ!という気分になっている。
登る山じゃなかったこと、そもそも答えは自分の中にあったこと、そして、私は私の形ですでに持っていたことに気付いたから。

今、まさにこうやってこの文章をつづっているのも、その答えのひとつである。


易は、とことん面白い。
視点をどこに置くかで、見える世界はがらっと変わる。

水山蹇の卦を見て、
氷山の中に視点を置いた私と
山のふもとで今登ろうとしている山を眺めている友人。

示していることは同じだけれど、解釈が大きく変わっていく。

厳しくも優しい、易しくて厳しい易が教えてくれるものは、どんどん私を豊かにしていく。難卦であっても。いや、難卦であるがゆえに。

(初夏~夏にかけて難卦コレクターかなってくらい、自分に関することは難卦ばっかりだった)

…で、何の問いだったんだって?

「私が私のピュアなる少女性を発揮するために、もう一皮むけるための示唆をください」

くだらねぇ~~って思った?それでいいの、たのしいことが重要♪


ありがとうございます!