ドライブとYouTube_top

ドライブとYouTube

先日、大阪から長崎までの長距離運転を敢行した。

家族を乗せて中国地方や九州の観光地をめぐった後、最終日には家族を車から新幹線に載せ替え、あとはたった一人で黙々とドライブを楽しむ。そういう旅だ。

高速道路は使わずに国道や県道を通って16時間以上。いくつか休憩を挟んだものの、行き帰りで約1500km。復路はほとんど休みも取らずぶっ続けの運転だった。

マイカー旅行は交通費がだいぶ節約できる。浮いた費用はその分、宿や食費に回すことが出来る。そういう理由で奥さんを説得したわけだけど、実はそういう理屈は半分口実で、本当の目的はドライブ、つまり車を運転することだった。車を運転するのは好きだ。

フレッシュな免許取り立てでもないし、特に良い車に乗っているわけでもない。なのになんでそんなに車を運転したいんだと思うんだけど、僕も含め旅行ではなくドライブ自体が趣味という人は意外とちらほらいる。

ドライブの何が楽しいのか。理由としてはいろいろあるけれども、ただ座っているだけなのに目の前の景色が変わっていく、それが面白い。

そんなことかいな、と失笑してしまうけど、シンプルに言うとそういうことなんじゃないかなと思っている。

アクセルを軽く踏むだけで、地平線の向こうから様々な色形や文字が放射状に迫って来て、通り過ぎる。視界に入るのはもっぱらロードサイドのどうってことない風景だけど、その流れるような刺激が高揚感をもたらすのだろう。

もしかするとドライブは、YouTubeに似ているんじゃないか。

十数時間ハンドルを握りながら、僕はふとそんなことを思いついたのだった。

ただ座っているだけでさまざまな視覚体験が享受できて、電車やバス、映画やテレビみたいに、手足を縛られただただ景色を受け入れるだけでもない。YouTubeとドライブは適度に能動的であり、なんとなく自由だ。

暇つぶしにYouTubeを観はじめて、気がついたら朝になっていたという人は多いだろう。そういう人はドライブに向いている。自転車やバイクツーリングなんかも良いだろう。

趣味はドライブなどというと、どことなくアウトドア派のような雰囲気があるが、実は意外と内省的な陰気趣味なんではないかと思っている。

記事が貯まったら一冊の本にしたいと思っています。そのための資金にさせていただきます。ぜひサポートをよろしくお願いします。