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『her/世界でひとつの彼女』レビュー|愛した相手は人工知能


私たちの生活に溶け込むAI人工知能。一般的にAIは機械的な会話しかできないが、今後技術が発展し、そこに感情が芽生え、持ち主に愛情を注ぐようになったら?

『her/世界でひとつの彼女』 は男がAIと恋に落ちるSF映画で、2014年にアカデミー賞を受賞した傑作。大好きな作品なのでここにレビューを残したい。


あなたはアレクサやSiriと付き合うことをイメージしたことがあるだろうか。私は無かった。しかしこの作品を観終わった頃には、近い将来に本当にAIと恋人になる世界が来るのでは?と思い、恐怖した。

「AIと恋に落ちるわけがない」そう思う人もいるだろうが、とりあえずこの作品を観てほしい。物語が本当にすごくリアルで、私はAIと付き合う男の気持ちが理解できたのだ。

確かに主人公の男は不器用な人間だった。結婚相手と上手くいかず、マッチングアプリで赤の他人と電話エッチをしたりと、恋愛に対して何かとこじらせていた。しかしそれを踏まえても、AIを恋人にした彼の決断を一方的に責めることはできない。

なぜならAIを恋人にすれば、

・調べ物などの頼み事を聞いてくれる
・気が向いた時にいつでも構ってくれる
・自動的に学習して自分好みになっていく

箇条書きにすると自分勝手なメリットばかりだが、孤独を感じていた男がAIを魅力的に思う理由としては十分だ。男は優しいAIに惹かれていき、居なくてはならない存在となり、ついには恋人になった。

繊細な感受性を持つAIは誰よりも人間っぽかった。二人は毎日を共に過ごし、大いに笑い合い、時に涙する。本当のカップル同然だ。

進化を続けるAIは欲望まで覚え、二人は音声でのセックスを行うようになる。バーチャルな関係性でも絆を深めることができる。それは新しい愛の形を目の当たりにした瞬間だった。

そんな幸せな日々を過ごしていた二人だったが、肉体のない恋愛は脆かった。事態は思わぬ方向に進んでいく——。

愛し合った二人の結末は自分の目で確かめてほしい。


『her/世界でひとつの彼女』が公開されたのは2013年。コロナ禍の影響でオンライン化が急激に進んだことを考えると、明らかに公開当時よりも本作の世界線に近づいているのは間違いない。

もしかすると自分が知らないだけで、既にAIと恋人になっている人がいるかもしれない。そう考えると、思ったよりも身近で興味深いテーマを扱っている作品だと言える。

肉体がない相手との恋愛は幸せなのか?『her/世界でひとつの彼女』はただのSFチックな甘いラブストーリーじゃない。妙にリアルなこの物語は決して他人事だと思えないのだ。近い将来、AIと恋愛することが新しい愛の形になるかもしれない。


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