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受容され共感されたら - C.ロジャーズ

臨床心理の大御所、カール・ロジャーズ。(他国の事情は知らんが)日本のカウンセラーはその多くが、非指示的カウンセリング(non-directive counseling )や来談者中心療法(Person-centered-approach)に軸足を置くロジャリアンなんだとか。

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でも、経済学部を卒業してビジネス畑に直行だったわたしは、フロイトやユングは知っていたけれどロジャーズは名前も知りませんでした。

キャリコン養成学校で知って、そんな肝心な人ならばと思って、彼に関する本を一冊読んでみたら…

生涯、エネルギッシュに自分探しを極めた人だったようです。厳格で抑圧的なクリスチャンの家庭に育ち、神学校を否定して心理学の世界に飛び出した。挑戦や挫折を繰り返しながら臨床を重ね、行動療法が主流だった当時としては画期的な著作で一躍有名人となり、60代になってから自由恋愛に目覚め、家族との葛藤を超え、非構成的グループ・エンカウンターを開発し、晩年は若かりしころに否定した精神性の追求に回帰しました。

Amazonで評価が高かった「カール・ロジャーズ入門 自分が”自分”になるということ」を読んだけれど、書き手の解釈を大いに含む伝記ノリだったので生きざまに詳しくなってしまった。理論を知るには「治療的人格変化の必要にして十分な条件」等の論文を読んだ方が良かったかも。

そのロジャーズが1940年代に唱えた傾聴の基本姿勢は、キャリコンの筆記試験では毎回、中身までしっかり理解していないと答えられない形で出題され、面接実技試験でも、要はこの3つができているかが問われます。

1.受容的態度(unconditional positive regard)

2.体験的共感的理解(empathy)

3.自己一致(congruence)、あるいは純粋性(genuineness)

言葉としてはアタリが良いため、養成学校が終わる頃には「オッケー、わかったよ!最初分かりにくかった自己一致も肚落ちしたよ!!ロープレ練習もいっぱいしてバッチリよ!!!」と、なりがち。なんだけれども。

実技試験直後の今…全く自信がありません。

普通にやれば大丈夫と思っていたのに、途中で一瞬、混乱した。自分の応答が設定シートに書かれていたことに基づくのか、目の前のクライエント役の発言をふまえてのものなのかわからなくなった。そんな失態、ロープレでは一度もなかったのに。まさかの緊張?その狼狽、表に出てたかな?

ぐったりした。なのに、結果が出るの一か月も先だよ…

筆記のほうも、実は自己採点では1問差でアウトでした。でも、毎度後追いで「問題にエラーがあったから、この設問はみんな丸」というような修正が3個くらいある試験なので(それもどうかと思うが)…蓋が開くまでこちらも希望が捨てられないのです。

こんなモヤッとした時に、ロジャーズが目の前にいれば…。

ー 意地悪な引っかけ問題って、嫌ですね。

ー 小学生の教育綱領に”キャリア教育”なんて入れた人、センスないなって思ってるでしょ、まきさん。

ー 法令系のことは実務では社労士にリファーするんだから、試験では重箱の隅の知識よりもフレームワーク理解を確認するべきですねえ。

ー 今回は合格率が2割程度に下がった第4回(それ以外の回の合格率は6割)を超える難しさだったらしいですよ。

…とかって、わたしの言い訳をすべて母性的風土で受容・共感してくれるのかしら。うん、いいかも。

まあそんなふうに、余裕で受かるつもりでいたのにこのざまで落ち込んでいたところで、旦那が一言ボソッと「試験は水物だから仕方ないよ」と声をかけてくれました。たった一言だったけれど、そこには受容的態度・体験的共感的理解・自己一致の3条件が見事に揃っていたため、「わたしの気持ちをわかってくれた、旦那!」と、ずいぶん気分が軽くなりました。

そうなのよ。ストレスが大きすぎたり、複雑すぎたり、素の姿をさらけ出せる場がなかったりする時はプロのカウンセラの出番なのだけれど、その手の受容や共感は、本来日常の人間関係のなかにあると良いものなんですよね。

受容されてようやく、私も「試験を舐めて好きな理論系のことばかり調べていた自業自得」という事実と向かい合う気になりました。好きなことだけしてはダメという試験の定石を思い出し、やっぱりちゃんと満点取るつもりで法令や制度も勉強しなおして、次回襟元を糺して受け直そう、と、謙虚な気持ちになることができたのでした。

だけど、予想外に、もしすれすれでも合格していたら?

その時には、我がみなぎる自己効力感(悪く言えば根拠ない自信、良く言えば立ち直りのはやさ)のもととなるいくつかのエピソードを披露しましょうか…いや、図太さをこれ以上強化しても仕方ないので、やはり今回はなるべくして不合格になるほうが、自分のためには良いような気も…。

追記:試験の結果、実技は謎の合格、筆記はなるべくして不合格でした。結局、二度目の試験でめでたく資格を得ました。

「人の話をきく」ということを、誰もが学び再現できるスキルとして言語化したのはロジャーズの偉大な功績だと思います。その人はオレンジ色。死ぬまで放熱系の、熱い人。個人的にはロジャースの対抗馬だったウィリアムソンとか後継者と言われるジェンドリンのような寒色系の臨床家が好みなんだけれど(私のタイプなんか誰も知らんがなって感じだとは思いますが)、その後の心理学シーンの潮流となる人間性心理学の先駆者とされている、ロジャーズはやっぱり文句なしに偉大な臨床家だったのです。

どなたさまも、ハッピーなライフキャリアを。

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