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悪の枢軸の名を刻め

ネットフリックスで「ペインキラー」というドラマ仕立てのドキュメンタリー見ました。

実話ベースの作品です。サックラー三兄弟が経営するパーデュー・ファーマは、2000年頃に、FDAの審査官を買収して実質麻薬のオピオイドを鎮痛剤として認可させ、イケイケの販促で全米のクリニックを通して大量の処方をバラ巻き、たくさんの人を殺して巨大な富を築きました。

しかし、その欺瞞が誰の目にも明らかになっても、政治の根回しでサックラー家のメンバーは誰一人個人的な実刑に問われておらず、依然として大金持ちなので「全米一の嫌われ者」だという話。

実にムナクソワルイ話なんだけど、ぜひ、みんなに見てほしい。見終わってから検索の手が止まらずいろんなものを掘り起こしたんだけど、いくつか興味深い話もあったので追記する。

サックラー家は有名な美術館に多額の寄付をして名を残そうとしていた。(劇中、死の商人と呼ばれることを恐れてノーベル賞を立ち上げた、ダイナマイトの発明者の逸話も引用される。サックラー親子の間での会話は演出かもしれないが、やってきたことを見ると、確かに彼らは名誉を欲していたようだ。)しかしここ数年でその悪質さが明るみに出て、世界中の美術館がサックラーの名前を削ったり、寄付を断ったりという動きが出ているらしい。

兄弟のひとり「モーティマー・サックラー」で検索したら、その名を冠した美しいバラの品種が出てきた。2002年に資金集めのオークションでお金を出して命名権を得た奥さんが名付けたらしいが、これも、どういう力が働いたのか、去年2022年にメアリー・ディレニーに改名されている。

ネットフリックスの本作以外にも、オピオイド問題を取り上げた番組やドキュメンタリーはあった様子…それら目的が、いまだにフロリダでぬくぬくしてるサックラー家の名前を毀損して責任を追跡することであるなら成功している。

ドラマ序盤で、憤る調査官に上司が言う。「犯罪を見つけろ。罪に問うことができねばこの悪事を止めることはできない。」それで捜査官は粘り強くサックラーを追い詰めるのだが、最後の最後に政治的圧力がかかり、和解せざるを得なくなる。そこで敵陣に出てきた弁護団のなかに元・ニューヨーク市長のジュリアーニの名前がありました。20年前はニューヨークの治安を良くした立役者だったのに、今や悪の枢軸に堕ちてしまったのね…。

中毒による死者がどんどんでていることを把握しつつも徹底的に隠蔽し、「悪いのは薬ではなく乱用者」との詭弁で拡販を続けた、サックラー兄弟は、ブレイキング・バッドのウォルター・ホワイトが善人に思えるレベルの面の皮の厚さです。兄弟の一人はすでに高齢で死んで逃げきっていてるし。2019年の日本語の記事は、当時の経営陣ではなかった息子のはなし。

そして、2023年8月(こないだ)、巨額の賠償金に追われるパーュー・ファーマの破産申告は保留された。もしもその破産が承認されたら、問題を引き起こしたサックラー家の人たちは確信犯的に人を殺して得た大金を抱えたまま個人としては保護されることになってしまうので…つまりこれは、現在進行形の問題なのだが、そんな道理は通らないと思いたいけど、アメリカの権力の中枢には私腹をこやすことにしか興味がない人が蠢いてそうなので、どうなるんだろう。

日本でいうとジャニーズ事務所の件も、ひどい悪事であるのに当事者が何の償いもしないまま死に逃げしていて、半ば同じ穴のメディアの人たちが名前を残すの残さないのでわちゃわちゃ揉めてて、どうかんがえても酷すぎて責任なんて取れないけど、その甘い蜜を引き継いだ近親者が守られてぬくぬくしてるのは道義的に違うんじゃないかてっていうの、ちょっと似てる。

それから、最近話題?の(杉本彩さんのインスタをフォローしてて知ったけど、日本の報道でどの程度扱われているかはわからない)悪徳ペットショップ「クーアンドリク」の、命を命とも思わない所業も。即座に業務停止命令出すレベルだと思うけど、法律に抵触しない範囲で金儲けを押し通す悪質さが似ている。

あきらかな「悪」をすぐに止められないというのは信じられない気がするけど、時間をかけても追求し、そういうことが再発しないように社会の仕組みを変えていかなくちゃいけないよねと思う。


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