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リスクについてのものおもい

ひろゆき氏が「年収1億くらいあった時でもクレジットカード審査に落ちた」と語るニュースを見た。

新卒から(今みたいにすごい感じじゃなかった)アップルに入社した私は、先輩社員から「外資系って年収のわりに与信が低くて、賃貸入居を断れることもあるからね、気を付けて」と教わった。

その後も長らく外資系だったけど、運のよいことに、在籍したところがブイブイ伸びて超有名企業になったがために、カードで審査落ちしたことも、賃貸えらびで断れたことも、ローンで苦労したこともない。

自営になってから新しいクレジットカードを作った時も、法人の銀行口座を開設した時も、念のため事業計画書まで用意していたけれど、あっさり通ったので出さずじまいだった。たぶん、学歴とか有名企業での勤続歴とかがあったからだろう。

実は私は、リスク細分型保険が認可された1990年代末、まだ大学生の時分にアメリカンホームダイレクトのコールエージェントのバイトをした。自動車損害賠償保険のね。今やAIのおかげさまで、その手のリスク予測精度はさらに向上し、申し込みはオンライン完結で、保険会社はあらゆるリスクを回避して絶対に損をしない仕組みになっているのだ。

冒頭の話に戻ると、ひろゆき氏は若くしてイレギュラーなスタイルで経済的に成功したのでリスクのかたまりとみられたのだろう。まったく先見の明のない話だが、型通りの与信とはそういうものだ。はみ出し者、反逆者、トラブルメイカー、四角い穴に丸い杭を打ち込む者たちをはじく。

一方で、個人的にどうしてもやっちまった感が否めないのが「病気」。

私と同様に、すぐ死ぬかもしれない病の可能性にさらされた経験のある友人と話したとき、彼は「家族のこと考えると、蓄えがあったから冷静でいられたけど、それがなかったら詰んでた」と言っていた。ほんとそれ。

お金をめぐるあらゆる申し込み書って、既往歴の欄があるでしょ。一度この手の黒星がつくと、ローンの団信も組めないし新たな保険にも入れない。

私が病気発覚前に独立していろいろ基盤を整えることができたのはただ運がよかったわけだが、たとえば私の娘が将来がん保険に入りたいと思った時には「家族の病歴」欄に私のことを書かねばならない。加入を断られるか、高い保険料を提示されるか。申し訳ない。

そして去年、日本で働き始めたばかりの外国籍の友人の口座開設の手続きを助ける機会があって色々調べる過程で知ったのだけど、日本のメガバンクってあきれるほどヨソモノに冷たい。

大企業の外資系役員なら企業がサポートするから別格なんだろうけど、ふつうの外国人労働者は門前払いと言ってもいい。申込ページは日本語のみだったり、オンライン申請の文字数制限が外国人の長い名前に対応していないのに”正式”でないとだめだったり、郵送手続きも電話の問い合わせも日本語ができなければだめだったり。

それで、改めて感じた。金融って・・・カード会社にしても保険会社にしても、ソーシャル・グッドの反対じゃないの。その助けが必要な人ではなく、それがなくてもなんとかなる人だけを選んで相手している。

「それがなくてもなんとかなる」サイドの私だが、実は早い段階からその仕組みを知って警戒し、いざという時は自力でなんとかする前提で頑張ってきた結果としてこのサイドに立っているという側面もあることは、言っておきたい。

若い人、ひろゆき氏の記事を読んで「へえ、芸能人や自営業は大変だな。日本企業に勤めてる普通の日本人でよかった」という感想をもちようでは危ういよと言いたい。そののんきさが社会をだめにしている。時代の当事者の私たちは、数年先に足を取られてあっけなく詰んじゃう可能性が高いのだ。

最近はやりのSDGsというのは、二酸化炭素排出量の多い製造業だけの話ではない、安全地帯で富を溜め込む金融のありかたこそ、そろそろ問われねばならない。皆がソーシャル・グッドを考えて、余裕を失い許容限界にきている世界を救わねば。急に変わるものでないとしても、せめてその仕組みに関心を寄せ、自分で考えて選択できる人が増えていくといいと思う。

さいごに、この物思いに絡んでいくつかの記事のリンクを紹介します。

正規と非正規の格差拡大。相対的貧困率の高さ。外国人労働者率の増加。コロナのインパクトを示す統計はまだ出揃っていないが格差を加速させる方向に働いているだろうという肌感覚。それが高齢化の進展によってさらに悪化のほうに働くよねという予測。

賃金格差の拡大傾向<出典;リクルートワークス研究所

日本の相対的貧困率は16%<出典;チャンスフォーチルドレン

外国人労働者なしでは成り立たない社会<出典;日経新聞


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