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【創作】何ひとつうまくいかない朝

朝から蒸し暑い。髪が思うようにまとまらない。ブローしてもアイロンしてもどうにもこうにも決まらないので、結局後ろで縛り上げた。丸顔が際立つのでそうしたくないんだけど、髪振り乱してどうしたのってきかれるよりましだ。

化粧のノリも悪い。いつも使っているチークの色が、妙にギラギラして見える。新しいグロスも百貨店の白すぎる光の下でで試した時は瑞々しく見えたのに、なぜだかべたべたと重く、顔色を一層くすませる気がする。

鏡の中の自分の顔の、アラばかりが目に付くのを、大きな揺れるピアスでごまかそうと思ったら、いつもの場所に片方しかない。ムキになって探し回って、化粧台の足元の死角に潜んでいたのをようやく見つけたけれど、朝の貴重な数分を無駄にしてしまった。もう!

慌てて家を出ようとしたところで、玄関の鏡にうつる明るいピンクのアンサンブルの胸元に謎のシミを見つける。(いつの間に!?)小さくても気が付いてしまえば無視できないのがシミってやつだ。白いサブリナパンツとあわせられる小ぎれいなトップスは洗濯中。上を白シャツにしたら、真っ白白では真夏のリゾートの人みたいになっちゃうじゃないか。組み合わせを考えているうちに時間は容赦なく過ぎていく。んもう!!

ようやく妥協したワンピースに合う先の開いた赤い靴を履きかけて、ペディキュアをぬっていなかったことに気がついた。心の中で舌打ちをしながらストッキングはいて(暑いのに!)ベージュのピンヒールにする。あー、もう遅刻する・・・。

フィクションです。顧客先に行く日でも(その気になれば)起きて15分で家を出られてしまう私の現状からは程遠いストレスですが、20代の頃は、この手のどうでもいいちっちゃなことに気を配っていたような、そうでもなかったような。毎日同じ服を着るスティーブジョブスや毎朝儀式のように同じ動作を行うイチローに通じる習慣化・シンプル化の強さというものを、我が子には教えたいです。

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