昨日12月30日付けで、2017年から制作・ドラマトゥルクとして所属していたダンスカンパニー「水中めがね∞」を退団いたしました。在団中はたくさんの方から応援していただき（そしてときにご心配もおかけし）、感謝が尽きません。ほんとうにありがとうございました。

大学1年生のときから中川絢音のダンスが大好きで、それは大袈裟でなく、まるで雷に打たれたような、恋のようでした。

「中川絢音のダンサーとしての寿命を少しでも長くしたい」
「中川絢音のダンスをたくさん観たいから、わたしが公演を企画をすればいいのではないか」

そう思って、大学3年生のときに制作者への道を歩み始めました。実際のところ、職能的には制作者向きである自覚が少々あったのですが、当時はやはり脚本家・演出家として大成したかったので制作はあえてやらずにおりました。しかし、我が恋のためには仕方がありません。わたしは、水中めがね∞のために制作者になったといっても過言ではないのです。

とはいえ、当時水中めがね∞は演劇とダンスの両方を上演する団体でした。わたしはわたしで「カミグセ」を主宰しており、そして我々は同じ2011年旗揚げの、大学同期の学生団体でした。カミグセと水中めがね∞のクレジットを二つ並べるのはなんだか抵抗があり（いまでこそなんとも思いませんが、当時は「なんか桜美林桜美林しまくってるな」と…）、助成金申請の都合で正式にメンバーとして名前を連ねる必要が出た2017年にようやく入団、という形になったのです。そこまでの裏メンバー扱いの4年ほどは、みんなから「裏のおかあさん」などと呼ばれていました（笑）

満を持して表のおかあさんになったらなったで、自分の至らなさが悔しく、なんども捻じ切れそうになりながら、なんとかなんとか振り落とされまいと走ってきました。

やっぱり、メンバーはみんなどこかネジがぶっ飛んでいて（それが面白いところでもあるのですが）、当然のごとく号令をかけてもほぼまとまらず（それが面白いところでもあるのですが）、もういっそわたしもネジをぶっ飛ばさないといけないのか？？？と、頭を抱えることも一度や二度ではありませんでした。しかし、そのぶっ飛びはときにたまらないほどの面白さを呼び、想像もつかないような作品を生みました。次第に、できるだけメンバーの個性をわたしのものさしで平均化せず、言う時は言うけれどそれ以外はじっと見守る係になっていったように思います。

退団を意識したのは、2021年の夏頃でした。自分の周りの環境が変わることになり、このまま水中めがね∞に関わることはかなりハードであること。そしてなにより、自分自身が制作者という仕事に対して熱意を持って向き合うことが難しくなりつつあったことから、このまま水中めがね∞に居続けることはできないと思うようになりました。

昨夏の吉祥寺シアターでの『GOOD COW 権』は、企画の大枠を組んだ段階で制作を別の方におまかせし、一旦水中めがね∞を離れました。自分の中では「こっそりお試し退団」みたいな感じでした。少し離れて活動を見てみると、自分がこれまで適当にしてきてしまったり、どうしてもハンドリングがきかなかった部分、「これはわたしが頑張って出来ていたんだな」みたいな部分の両方が見えて、嬉しさが1/3、悔しさが2/3でした。

もしわたしに、もっとパワフルな体力と精神力があったら、辞めるなんて考えなかったかもしれません。しかし率直に言って、いまのわたしは体力も精神力も痩せ細っていて、水中めがね∞のパワーを前にただ立ち尽くすのみ、といった具合なのです。悔しいけれど。なんだか悔しいばっかり言っていますが、わたしにとって水中めがね∞はそれぐらい力強く光っている場所なのだと思います。

簡単な話、水中めがね∞が大好きなんですね。きっと世界一好きだと思います、この自信だけは誰にも負ける気がしません。大好きだから、大好きなままで終わりたかった。長々話してしまいましたが、これだけが理由です。

そういうわけで、ただの大学の同期に戻ります。でもこの恋はきっと永遠です。客席や画面の向こう側から、誰にも負けない愛をもって今後の水中めがね∞を応援していきたい所存です。

これまでお世話になった皆様、残る3名のメンバーを、どうぞよろしくお願い申し上げます。

ここからは、水中めがね∞の勝手に思い出写真館！（笑）
（立ち会っていなかったり、ノータッチだったコンペなどは写真なしです）

大学3年生の春休み、わたしがはじめて水中めがね∞の制作を担当した学内での演劇公演です。舞台上にウーパールーパーがいた、若気の至りか？

卒業後一発目、吉祥寺櫂スタジオでやった演劇公演でした。予算が無くて中川がスタッフ分のお弁当を手作りしたら、重すぎて移動できないという誤算。打ち上げでぱやが泣いて、一緒にタクシー乗って上石神井の家（当時）まで帰った。

全裸写真のチラシは公共劇場に置いてもらえないという知識を得ました。「水中めがね∞ダンス部」と銘打って、はじめてダンスの単独公演に挑みました。同じく2017年入団の松隈加奈子は、この公演で水中めがね∞初参加。「まともな人間が来た！！！」という印象で、ちょっと嬉しかったです。

この年は夏にダンス、秋に演劇でめっちゃ忙しかった。新宿眼科画廊で、なぜかわたしは制作に加えて照明と舞監的なこともした、気がします。もう記憶が曖昧。

小屋入り中に眼科画廊の裏の花園神社で酉の市をやっていて、退館後に3人で遊びにいったりもしました。普段ほぼ一緒に遊ばないので、結構貴重で楽しかった。

ここから水中めがね∞はダンスに本腰を入れ、コンペライフがスタート。のちにフルスケール作品になる『絶滅危惧種』もこの時はまだデュオ作品でした。

やっとひとつめの賞をゲット。賞金は次の公演の資金としてとっておいてほしいな・・・と密かに思っていましたが、打ち上げで綺麗さっぱり溶かしてきやがりました。

同い年のユニット・振付家7団体が集まり、怒涛の勢いで作品を並べたオムニバス企画。超大変だった。あと、このころは中川がアフタートークに自信がないと言うので、わたしも一緒にアフタートークに出演していました。ここでやっと正式入団。

中川、裸で外を走る動画をこっそり準備するも、当然ゲネでバレ、怒られる。実は「1991」が終わった頃、中川に「そろそろ一回ソロをやったほうがいいと思う、自分でちゃんと踊ったほうがいい」という話をしていたら、このソロ作品が出てきたのです。とても好きな作品。

ダンコレⅡ、1991、踊る。秋田2017と、少しずつ形態を変えながら踊り続けた『絶滅〜』、一年経ってダンコレⅠにてリベンジマッチ。服を脱いじゃいけないなら、ベージュのブラが汗に濡れて透けるのを待てばいいという新しい気づきを得ました。なるほどね〜（？）

「リトルダンサー」みたいな宣材が撮りたい！と言われて三軒茶屋に集合してみたらこれですよ。水中めがね∞にいると大体のことは怖くなくなるのですごいです。この格好のままカレー屋さんにも行きました。

『絶滅〜』シリーズの最終形態はフルスケールの単独公演になりました。全部好きなんですけど、ラストの無音で踊るところ（この写真のところ）が特に好きで、毎ステ幕の隙間から観てました。あと小屋入り日に38℃の熱を出し、床に雑黒を敷いて寝ていた、しんどかった…。

単独公演もやったし、たまにはみんなで遊ぼう！ということで、大阪のユニバへ。めっちゃ楽しかった…。松隈がいろいろ案内してくれて助かる我々。サメの前でもついポーズをキメてしまい、クルーさんをビビらせる。

水中めがね∞は毎回ドレスコードがあるのですが、今回は「獣」ということでアニマル柄の服に。当然持っているはずもなく、夜の池袋で急いで豹柄のスカートを買いました。『〜結婚論』再演は、根本が「CAN YOU CELEBRATE？」を歌うシーンが追加され、わたしが勝手に喜ぶ。

通称「お面」の演目で、優秀作品賞を受賞し、初の海外招聘が決定。めっちゃ喜ぶ。しかしフィンランドは遠すぎて自力では渡航できないので頑張って助成金の書類を書き、こちらもついに初採択。が、のちにコロナでフィンランドへの招聘は中止、本気で落ち込む。

チケットが怒涛の売れまくりでうれしい悲鳴をあげていたら、作品も怒涛の踊りまくり系でダンサーが悲鳴をあげていた。こんなにひたすら踊る作品は水中めがね∞だとなかなかないので、実は貴重でした。

スケジュールの都合がついて、お面の韓国招聘に同行しました。空港で早速中川のスーツケースが重量オーバーで引っかかり、中身をみんなで分けて持つことに。絶対そうなると思っていたので、わたしはあらかじめ荷物を少なめにしてあった。

現地では、音響と照明に英語でQ出しをするという、大変緊張するやつをやりました。でも観光もできたし、食べ物も美味しかったし（辛いもの以外）、楽しかった。
ちなみに、帰国したその足で、参加していた吉祥寺ダンスリライトvol.1のお面大人数バージョンの舞台稽古に空港から直行。スケジュールちょっとシビアすぎた…。

青山で新しい宣材撮るよー！と言われて世田谷区の稽古場に集合してみたらこれですよ。いかついにもほどがあるし、中川なんてブラジャーですからね。まあ服着てるだけいいか、感覚が麻痺してもうわかりません。

2019年に優秀作品賞を受賞したSAIでEXHIBITIONとしてお面の上演。中川が関係者リストにわたしの名前を載せ忘れ、コロナ対策でひとりだけ楽屋に入れず寂しかった。かなりやり込んだ演目なので、構成も洗練されてソリッドでいい感じに。

念願の日本舞踊家さんとのコラボ企画。マジで超大変だった。中川、掃除ロッカーやセグウェイなどを買い、そのつど「経費で落ちないけどいい？」とわたしに釘を刺される。あと、日本舞踊家のお二人にみっちりインタビューさせていただいたのが面白かったです（記事はこちら）。企画したアフタートークも盛り上がって嬉しかった。中川って、アフタートークを組むと「アフタートークやれるの？ありがとう！」って喜んでくれるんです、面白いなといつも思っていました。

新人シリーズでやった『有効射程距離圏外Ⅰ』が好きすぎて、そこから頭が離れなくなってしまっていたわたしから、中川に一緒にやろうと提案した作品。結果、わたしも出演することに。わたしは全然台詞を覚えられないのに、中川は台詞もサクサク覚えるので羨ましい。ラストはわたしが四股を踏みました。

このあと1月まで続く「お面月間」に帯同することを決め、場当たりで中川の代打をやったりしました。本番終わった瞬間、久々に感動して泣きました。手前味噌ながら本当に良いパフォーマンスだったと思います。結果、「審査員賞」「若手振付家のための在日フランス大使館賞」「アーキタンツ・アーティスト・サポート賞」の3つをいただくことができました。個人的には、在日フランス大使館賞を絶対に獲りたいと思っていたので、とても嬉しかったです。これまで無冠のダンコレ、これにてリベンジ完了。

お面月間2本目、会場のサイズがダンコレに比べて一気に小さくなり、場当たりで頑張って合わせる。テクニカルの皆さんが、ダンコレ時のテクニカルをやってくださった方からやんわりと引き継ぎを受けてくださっていたりして、頭の下がる思いでした。水中めがね∞のことをわかってくださる方が周りにいると、本当に心強いです。

お面月間3本目にしてラスト、秋田でのコンペが開催できなくなり、映像審査のために座・高円寺で収録をしました。さすがに丸1ヶ月おなじ演目に帯同すると、かなり詳細にきっかけや振り付けを覚えられるようになりました。この時は音響のQ出しメイン。序盤〜中盤まで音ハメが多く、ものすごくQの数が多いんです。香港とイタリアに招聘が決まりました、お疲れ様でした。

水中めがね∞に関わってから、はじめてほぼ外側から見守るだけだった主催公演。当日運営として受付には立たせていただきました。前回の単独主催『絶滅危惧種』と比べても来てくださる、気にかけてくださる方が本当に増え、毎ステ嬉しかったです。チケットも全ステ完売でした。吉祥寺シアターでの単独公演はひとつの大きな目標だったので、自分が在籍しているうちに叶ってよかったです。ありがとうございました。

という具合に、長々振り返ってみました。あとは中川とストリップ観に行ったあとサムギョプサル食べたりとか。積もる話は10年もやっていればまだまだございますが、このあたりで。

2023年からは、またカミグセ一本で、というかわたしの心の赴くままにやっていきたいと思います。

水中めがね∞も、カミグセも、つくにうららも、何卒よろしくお願いいたします。