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文化祭での出来事で覚悟を決めた私

夏休み明けに学校説明会にようやく参加した私たちは、その勢いで気になった学校へ次々と足を運んでいた。

スケジュールが可能であれば積極的に参加した方が、各学校の特色の違いが明確になったし、比較することもできた。

正直、説明会に参加する人数を見て人気のある学校が一目瞭然だった。


秋になると学校説明会に加えて文化祭も開催され始める。

土日開催の文化祭には、夫も含め親子で参加した。

当たり前なのだが、緊張感がある説明会とは違う。

校舎の入口から賑やかで華やかで、そして何より生徒達の楽しそうな雰囲気で学校全体が包まれていた。


小学生の娘も参加できる実験体験やお化け屋敷、小学校とは違う企画が魅力的に映っていた。

生徒達はお揃いのTシャツを着て、笑顔で「見てってね~」の呼びかけ。

すれ違う時に「こんにちは」の元気の良い挨拶。

ここに娘が通ったら、とつい想像してしまう。

娘は、文化祭用の校舎案内パンフレットを片手にあっちこっちと楽しそうに見て回り進んでいく。私たちはキョロキョロしながら慌てて後を追った。

午前中から開催されている文化祭。
そんなに朝から行くこともないだろうとお昼を家で済ませてからゆっくり午後から行った。でもそれは失敗だったと反省。

数時間見れば十分かと思っていた文化祭は、催し物が多く、定員がいっぱいで早々終了のものもあった。

娘の好奇心を満たすには、あまりにも短く、もう少し早い時間から参加すればよかったと早々に後悔した。

来年、6年生の時は早めに参加しようと心に留める。


文化祭では、素の生徒達の様子を見ることができる。

そして先生との関わり合いも垣間見えて、学校の雰囲気を掴むのにとても良い。

最近は、コロナ禍でオンライン開催となったり、縮小してしまっている。
生徒の様子が分かる文化祭が、通常のように再開されるのが待ち遠しい。


「あ、〇〇ちゃんかも」

娘の声でハッとする。同級生の子の名前だった。

そうか、他のお友達も親と見学に来ている可能性があるのだ。
広いホールの並んだ席で、顔見知りのママ達が3人見えた。
塾に行ってると噂で聞いていたあの子のママ!
そして隣には、娘が塾に行くきっかけになった子のママだった。

楽しそうに話していて誰一人こちらを見ない。

ホールへ向かおうとしていた私は避けるように回れ右で、その場を離れた。

理由は分からない。理由を考える間もなく体がそうしていた。
見つけた瞬間、なぜかその場を離れて見られてはいけない気がした。

あの子も中学受験するんだ!
そう思ったらなんだか心臓がバクバクした。
受験って考えたら、ここに来ている小学生みんなライバルなんだ。


私の周りでは、塾に行っていることも内緒にする人が多い。

正直、子供達からは漏れ聞いているのだが、あまり人には言わず、そして知られずに内緒で受験するような雰囲気がある。
受験に失敗した場合、それを知られたくない。
そんな負の気持ち。

中学受験は、すぐに合否が出る。不合格なら公立の中学へ進学できる。
落ちた場合も考えて、あえて自分から「中学受験します!」なんて言わないのだ。

これは、地域性にもよるだろう。一概には言えないが、受験する子が多い学区域では受験が当たり前になっているだろうし、関西から引っ越してきた友達は大阪では周りも隠していなかったが、東京では違った、と言ってた。
うちの小学校では、受験する子は学年で数人程度だった。


家に帰ってから私はモヤモヤした気持ちが残った。

夫からは「なんで挨拶しなかったの?」と聞かれた。
悪いことしてるわけではないのに逃げるようにしてしまった。

わざわざ近寄って、挨拶すればよかったのだろうか?
普通に「こんにちは」と声をかければ良かったのかもしれない。

合否という結果ありきの受験に対して、怖さを感じ、できればひっそり人知れずに受験できたらと思っていたのだ。

私には、受験生の親の覚悟が全くなかった。

当時の日記にはこう書いてあった。

なぜか知られたくなくて避けてしまった。
もう受験をすると決めたのだから、堂々と私も頑張ろう!
娘もあんなに勉強して頑張っているのだから!

私もようやく中学受験に真っ直ぐ向き合わなければと覚悟を決めた。






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