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レズビアンの出会い/『エロス』という新宿二丁目のクラブイベントへ行く⑥

あの夜から数週間経つ。

初めてクラブで会った夜、LINEは交換した。

また会いたいと思った方が連絡すればいい。こちらから連絡をしたら負ける気がした。つまらないプライドが邪魔をする。

このまま連絡がなければ、もう二度と会えない。さえからの連絡が欲しい。ノンケの、さえから、レズの私を求めて、また会いたくて連絡がくる。

年が結構いっているレズは、モテないから、しつこいとか。思われたくない。さえとの年齢差は、13歳差。私の方がだいぶ大人だ。心の中の想いは強くても、行動にはおこさないつもりだ。

心の中は、女々しくても、態度には出さないつもりだ。

さえは普段、絶対モテる。女子アナみたいだし、顔が小さいし、スタイルもいい。いい匂いもする。女子力の塊だ。他からのアプローチが多いだろうから、あえて私から連絡しないと自分自身に誓いをたてた。

今日は私の誕生日。さえと出会って今夜で3週間。二丁目に人があふれる金曜の夜。誰とも過ごす予定は何もない。1人でいるのが嫌だった。

友達に連絡をし、新宿二丁目のクラブイベントに遊びに来たが、考えるのは、さえの事ばかり。

今何をしているのか?もう会いたくなのか?私の事なんとも思っていないのか?考えても仕方がない事に、頭を悩ませていた。

女々しいけれど、会いたくてしかたないのは、私の方だった。

一緒に遊びに来ていた、友達に全ての話を聞いてもらった。

『絶対男がいる。私達レズと遊ぶのは妊娠しないから手軽な存在なのよね。気になるなら、連絡してみなよ。今。』

会いたいなら連絡すればいい。簡単な答えだ。確かにそうだ。

私は本音を隠して生きていた。自分の本音を言ったら、相手が困ると思っていた。本音を隠す癖が今でもある。素直になれない。

素直になる事は、わがままを言う事だと思っている。

会いたいのに、会いたいと言わない。

相手の返ってくる言葉が怖くて『言わない』じゃなくて、『言えない』のかも知れない。

曖昧な世界が心地よいと、自分自身が望んでいるのかも知れないけれど、1年に一度の誕生日くらい。去年の自分と違う自分になる為に。素直になってみようと思った。

LINEをさえに送る。

初めて自分の気持ちをそのままの言葉で。

『今日私誕生日なんだけど、暇だったから二丁目に遊びに来てる。今何している?』

相手の事をなにも考えないで、自分の事だけを送ってみた。

返事も来ないだろうし、既読もつかないかも知れない。

だけど、ずっと連絡したかった相手に連絡をした。

素直になるって勇気がいる。ただ会いたい。

すぐに既読がついて、返事が来た。

『今仕事が終わって、これから帰るけど、ケーキ買って帰るから私の家でお祝いしよう。私も二丁目ちょっと遊びに行きたい!』

夜の22時、割と遅い時間にも関わらず、嬉しい返事が返ってきた。

二丁目から近い、新宿三丁目の出口、ビックスビルまで迎えに行く。笑顔で手を振るさえと三週間ぶりに会った。遠目からでもスタイルがいいのがわかる。美人で可愛いのは相変わらずだった。

友達も、さえの事を見て、可愛い。美人だ。絶賛だった。うらやましいを連発していた。私はさえの腰に手を回して、クラブへ行き、終電がなくなった頃タクシーで彼女の自宅へ向かった。

時には、素直になる事も大事だ。素直にならないと人生損をするかも知れない。幸せを感じた瞬間、あの時の嬉しさは今でも忘れない。

そして友達は、この日私に言った。

二丁目に来ているノンケはレズビアンと、遊びのつもりで来ている。若いうちに遊んで、年頃になれば結婚してしまう。レズビアンと真剣に将来考えている人はいない。

そんな話はよくある話だし、痛いほど知っている。

好きになったら悲しくなる。本気になったら悲しくなる。







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