見出し画像

ヘブバンとネタバレと私

『ヘブンバーンズレッド』、ヘブバンの略称で呼ばれているソシャゲがある。
2022年、相変わらずこれまで触れるであろうことが無かったコンテンツに触れたり、まさかの陽性者になったり、いつものようにライブに行ったりと2022年も色々あったが、私の2022年の重大な出来事と言えばこいつの存在が外せない。

私は元来ソシャゲをいくつも掛け持ちしているわけではない。超ビッグタイトルのソシャゲを全くインストールしていないし、SNSに流れてくるソシャゲのキャラもおっぱいと尻がでかいことしかわからない。
しかも私はKey作品のアニメを観たことも無ければゲームをプレイしたこともない。ではこのゲームに関してなぜプレイすることになったか。

第一の、というかこれが動機の全てなのだが、私は楠木ともりさんを推しており、主役の茅森月歌(かやもりるか)のCVは彼女である。
ぶっちゃけゲームとして面白くなくても主役ならしばらく楽しめるだろうくらいのあまりにも浅い考えであったが、ソシャゲを掛け持ち出来る気がしないため事前登録だけしたもののギリギリまでやる気が起きないでいた。そんな折、今年の2月のリリース直前の生放送を時間が偶々空いていたので観ていたのだが、下記のファイナルトレーラーが発表された時、放送に参加していた声優陣が号泣していたのだ。

正直、困惑した。
えっ、そんなに?と思った。たしかに引き込まれるトレーラーではあったが、そこまで?と思った。
だが、私の直感が告げていたのだ。このゲームには何かある、と。
この直感を信じたことは今にして思えば大正解であったと言わざるを得ない。今年1年の関心ごとの上位をキープし、かつてやってきたソシャゲでもほとんどしなかった課金までするほどのものであった。

どんなゲームなの?というプレイした感想も含めてこのゲームのいう「最上の切なさ」にやられたオタクの報告を聞いて欲しい。
ヘブバンにおいて「とりあえず2章まで」という広告があるので2章までの内容についてはワンクッション置かず書いていこうと思う。

どんな内容なの?

謎の宇宙生物キャンサーによる襲来を受け数十年たった地球。あらゆる兵器は通用せず、生存圏が狭まった人類はドームの中で怯えるばかりのなか、唯一キャンサーに攻撃が通る兵器、セラフが開発される。
セラフを操れることが出来るのは何かしらの才能を持った少女たちという共通点があった。茅森月歌もその一人。集められた少女たちはセラフを操り、人類を救うために戦乱に身を投じることとなる。

ストーリーのあらすじを読んだ率直な感想はありがちなソシャゲだな〜というのが正直なところであった。しかしそうではなかった

このようなゲームに限らずソシャゲでは主人公は名前を変えられる、ビジュアルがあったり無かったりする司令官のようなキャラクターを想像しがちたが、本作の主人公でありプレイヤーの目となり耳となるのは茅森月歌その人である。
本作のプレイの動機であった月歌のCVが楠木ともりさんであるからという点については新しい彼女の演技を観ることができ大いに満足している。
月歌は伝説のロックバンドのボーカルという経歴を持ち、突然奇行に走り31A部隊を振り回すというエキセントリックなキャラなのだが、

私にとって前川涼子といえば和泉ユキ(画面左)である

他部隊のキャラはそれ以上にキャラクターが濃いキャラが多く月歌がツッコミに回らざるを得ないことも多い為彼女のボケとツッコミを楽しめるという点ではお得である。シリアスなキメるところでは決めてくれるのも良い。

さて、未プレイかつ上記のトレーラーを見た人はさぞシリアスな物語を想像したことだろう。
ヘブンバーンズレッド、その実態は全員女verの銀魂と言っても差し支えないものだった。
しかもその掛け合いが2000年代のゲームを思わせるやりとりで今更こんなものを!と思いたくなるものがお出ししてきた。
今や元号が変わり、表現やらなんやらも変わる今日。それはもはやノスタルジックを通り越しており、背筋がムズムズする…と思いつつも妙に身体に馴染むのだ。
冒頭の『とりあえず2章まで』という言葉は私としては適切ではなく、「プロローグで合わないと思っても逃げないで!」が正しいのかもしれない。

令和だぞ?10年前で時空止まってんのか?みたいな掛け合いを聞いてクラクラしたことを強烈に覚えている。
だがプレイヤーがその原液垂れ流しのような応酬に慣れてくるのか、それとも製作陣も加減が分かったのか、ヒロインのツッコミもだんだん静かなものになってくるので、プロローグで合わなくても逃げないでやってみて欲しい。

本ゲームには50人ものキャラクターがおり作中では様々な掛け合いを見せるが、時折りこのような選択肢が出てくる



こういったストーリーの軸とは関係ない掛け合いを楽しむための選択肢は買い切りのエロゲやギャルゲでは珍しくはないがこれはソシャゲである。
3×3の会話のとなると選択肢を選び直し、別の選択肢を読むのも手間なのだが、なんとヘブバンではある時に選んだ選択肢が後々のやりとりの会話にまで影響を与えるためねずみ算式に会話が増えるのだ。重ねて書くがこれはストーリーの分岐とは関係ない。

月歌と他キャラの交流も当然あるのだが、
特定のキャラと交流せずにメインストーリーを進めた場合、月歌がメインストーリー上で名前を呼ぶ時に呼称が変わるなど矛盾が発生しないように調整されている。どこに力入れてんの!?!?

このように没個性的な主人公とは真逆な、個性の塊とも言っていい月歌だが、1人の兵士として日常、そして作戦を体験することで味わえるその臨場感は司令官のような存在をプレイヤーにするのとは段違いに違うものである。製作初期は司令官のようなキャラクターを主人公にすることが案として挙げられていたが没となったことが明かされており、これはこのゲームにおける大英断だと私は考えている。

豊富な、あまりに豊富な楽曲

このゲームはRPGであり、音ゲーではない。なのだが劇中を彩る楽曲にやなぎなぎさん、劇中の月歌達31A部隊により結成されたバンド「She is Legend」通称シーレジェが担当する。シーレジェは楽曲vocalを作中のCVとは別にXaiさんと鈴木このみさん、スクリームをayumuさんが担当している


その楽曲達の主な使われ方は劇中でのバトルの際の挿入歌である。これがめちゃくちゃバイブス上がる。
やなぎなぎさんの楽曲はメインストーリーで主に使われる。やなぎなぎさんの楽曲は章ごとの道中、つまり雑魚戦やラスボス用に個別に楽曲を用意しているなどあり得ないほど豪華な使い方をしている。

シーレジェ楽曲は主にイベントストーリーに沿った楽曲が用意され、劇中でも月歌の声かけにより31A部隊により『She is Legend』が結成され、定期的にライブを行うという体裁で楽曲を披露されている。これが現状月一のペースで新曲を出している計算になる。

CV芹澤優なのに喉から鈴木このみの声がする女、朝倉可憐

だからこれらの楽曲を聴く度キャラのセリフが脳内再生出来るし、あのキャラのスキル発動時のセリフの幻聴が聴こえるようになる。

そして1年も経たずに27曲もの楽曲がリリースされ、10月と12月にそれぞれのアーティストのフルアルバムがリリースされた。
狂ってる…。

ヘブバン楽曲によるライブは本来10月末にライブが予定されていたが2023年3月に延期予定である

ヘブバンは楽曲がいいので楽曲だけでも聞いてくれ。という思いである。シーレジェで現実のフェスに殴り込みしたら大いに宣伝となる気がする。野田クリスタルに泣かせている場合ではない。
『Particle Effect』からの『インドラ』のコンボ、聞いてると胸が絞めつけられてくる。
シーレジェ楽曲だとやはり『Burn my soul』が強すぎて、あとは一律で好きだが次点で強いのは『Judgement day』だなぁといった感じである

インフレがデカすぎる!

良いとこばかりではフェアでは無いと思うので悪い点も。このゲームはADVゲーム、もっと言うならノベルゲーの続きを読む為にRPGをプレイしているといった趣きだ。

だがゲームの難易度はヌルゲーと言われるゲームではない。キャラクターのレベリングや強化アイテムはしっかり抑えておかないと道中の敵にすら苦戦する。
私は実際3章のボス、フラットハンドが倒せず、1ヵ月近く強化に励みその後どうにかクリアした。ボスに対してあれやこれや考えて、それこそ登場人物のように頑張って倒すというカタルシスを味わう為に難易度は調節されていると製作のPは語っている。(それは実際にプレイした者として倒した時はアドレナリンがドバドバ出てきたのでその気持ちは分かるのだが.、味方にバフを盛りまくり、最大火力を出せるキャラで最大火力でぶん殴るが正義のゲームなので「本当か?」と疑いたくなる…。)

最近では幾分か難易度が緩和されたうえレベル上限が上がったので時間さえかければ難易度は鬼のように難しいというほどではないだろう。
しかしヘブバンの危惧されている、というかもう起きている出来事なのだが、すさまじいインフレに襲われている。これは4章実装直前のある日の私の編成のスクショなのだが

これを見てどう思っただろうか?ゲーム性は分からなくともLv100が何人も並んでいるというのが分かるだろう?
ポケモンで言うならば4つ目のジムあたりで全てのポケモンをLv99に育て上げていなければならないと言えばこの異常性が分かるだろうか?
ヘブバンにおいて難易度は調節されていると上で書いたが、それは現在実装されているレベルの限界値まで上げていることが前提の話である。
これ以上強化したいならば最高レアを限界突破させキャラクターのステータスとレベル上限を解放させる必要がある。
しかもこれはリリース半年いくかいかないか時点の話である。キャラクターのステータスをアイテムで盛るにも限界があるため更にレベルを上限の解放するしかないと思うのだが、これ以上上げていくとなると幾年か後の最終章あたりには上限Lv300くらいになってるんじゃないのか??

ハーフアニバーサリー以降インフレ対策としていくつかの施作がなされたがそれらに立ち向かう為にもある程度の戦力が必要になるためご新規にあまり優しくないというのが正直なところで
「どうやって闘えばいいんだ!(阿散井恋次)」
といった感じである。

このようにゲーム性は必ずしも満点ではない、とは言うものの、このゲームはユーザーの声をよく聞いてくれていると思う。特に操作性においては手間となる部分は定期的に改善されており痒い所に手が届くアップデートを何度もしてくれている。製作の柿沼Pは1年中半袖で衣装もアップデートもせず涙ぐましい努力をしてくれているのだろう。

本作の最大の魅力はシナリオとキャラクター、そしてそれを彩る演出に尽きる。
このインフレがあっても読ませたくなるほどにシナリオには引き込まれるものがある。むしろゲームでシナリオを読ませる没入感を味わせるかということにいかにありえないほど労力を割いている。
美しいビジュアル、豪華声優陣によるフルボイス、そんなものは溢れるほどソシャゲがある今日において何のセールスポイントにもなりえないのだが、その全てをシナリオという一点の為に注ぎ込むというあまりにもストロングスタイルなゲームがヘブバンなのである

上記のねずみ算式に増えていくやり取りもそうなのだが、掛け合いはいわゆるスマホタップで会話が進むので、ボケて、ツッコむというのがプレイしていてテンポが良く小気味よい。これは製作陣に一時代を築いたKey、引いては麻枝准氏が担当しているだけに、病的なほどのディレクションを元に製作されていることが明かされている。

麻枝の「作詞的」なシナリオのセンスは、短いセンテンスで画面いっぱいに表示されるモノローグと、ギャグシーンにおける特定のフレーズの繰り返し(いわゆる「天丼」)に顕著に見られる。テキスト送りのタイミングはユーザーの「ボタンを押す」という行為によって制御され、そこに麻枝自身の手がけたBGMや挿入歌がぴたりと重なることで、この上ない情動が喚起されるのだ。
よく麻枝の作風の特徴として言われる「愉快な日常と、泣きを誘う展開とのコントラスト」も、落差やギャップによってもたらされるものではなく、定型的なリフレイン(日常)を繰り返した上で一気にサビ(感動)が来るという、ダンスミュージックのコンポジションに近いテクニックが用いられていると言える。ユーザーはメロディーや音色を身体に馴染ませるがごとくキャラクターやその関係性への愛着を深め、彼女たちが人生の重大な決断を迫られるタイミングで、それまでの日常が戻ってこないという実感に胸震わされるのである。

『ヘブンバーンズレッド』 その核をなす、麻枝准というクリエイターの「最大の武器」と「人生」

キャラクターの立ち絵も自身の立ち位置で目線が動いたり、
とあるイベントストーリーでキャラの記憶の喪失に伴い段々画面が白飛びするように色を失われていったり
ある章ではとあるキャラクターが自信を失う展開があるのだが、その章のRPGパートではそのキャラクターの掛け声などはすべて声色のトーンが低めに変えられているなど演出の粋な計らいがよくも悪くもソシャゲらしくない。
これが買い切りゲームであったらならば…と何度思ったことだろうか。ただスマホゲーで無かったらそもそも手を出すことも無かったであろうことも想像に難くない。

さて、シナリオの話をしたい。
これを書くにあたりこのシナリオのあの部分に触れて、いやでもここの部分を話していいのか…?という自身の葛藤の渦中にあり、キーボードをたたいては消してを10日以上繰り返していたのだがいよいよ2023年になり、袋小路に行き詰まり何も書けなくなってしまった。

シナリオの話はしたいのだが、めっちゃしたくない。この矛盾。正確に言うと










めっちゃネタバレ含めて話をしたいんだよ!!!!!

ヘブバンをネタバレ込みで話をしてぇ〜〜〜。でも知らない人にはネタバレをしたくねえ〜〜〜。けど話はしてぇ〜。という気持ちがぐるぐるして千々に乱れてっぱなしである。

いつかキャラが死ぬ展開は来ると思ってたけど、2章で死人出るとは誰が思うのか?プレイアブルキャラクターだぞ?こんなに早く死ぬのか?それをわかっててこのゲームを「とりあえず2章までやってみよう」なんて広告してるって何考えてんの?
蒼井がハーフアニバーサリーのガチャのSSとして登場した時拳を突き上げて湧いた心と人の心無いんか?って言う心で天秤がガタガタに揺れたことを覚えている

話をすればいいじゃん?お前のための文章置き場だろ?という人もいるだろう。いや、それはその通りで、誰に気を使っているんだという話なのだが。

かつてダンガンロンパシリーズをプレイした時も思ったのだが、ネタバレをすることがゲームの致命的な内容となってしまう場合、「もし自分の何気ない発言が未プレイヤーへのネタバレとなってしまったら…」と考えてしまうと何を言っていいか分からなくなってしまい、キャラクターの名前のみを発する異常者が誕生しがちである。

昨年、いやもう2年前に公開されたシン・エヴァなども気を使いすぎた結果、皆観に行ってるのに話題に登らず、結果的に公式側からスポットPVという形のネタバレ解禁のお触れがあったことも記憶に新しい。

ヘブバンの話題に戻すと、最新章である4章前半、これがめっちゃ面白くて、そしてしんどい。
そして、私の中にある良心が『これをネタバレするなんて無粋なことはできない。初見でびっくりして欲しい、何も知らずに味わってほしい』と思っているので、うかつに踏み込んだ話ができない。プレイした人なら理解できると思うけれど。

プレイしながら「おい、噓だよな…?」って感じであった。
段々発する言葉がキャラクターの名前しか発する事しかできない異常者になってくる。月歌…。ユッキー…。おタマさん…。かれりん…つかさっち…。めぐみん………。

次なる4章後半だが、お預けをくらいもうじき半年経つ。断章が10月にリリースされ、イベントストーリーも楽しんでいるとはいえ、やはり早くメインストーリーに続きを読みたいのである。あの終わり方だぞ!?拷問か!?
今年の2月で1周年でイベントがあるようなのでおそらく何かしらの発表があると思われるが。ド直球の切ないストーリー、それをどのように楽曲や演出が彩るのか。向こう5年分は構想があるとのことだが…。

ダンガンロンパは1などはもう10年も前のゲームなので今更ネタバレ注意も無いだろうがヘブバンはまだリリースしてもうすぐ1年の赤子のよう、と言ってもいいゲームである。
しかも上記でも書いたようにライトユーザーにあまり優しくない難易度のせいでプレイヤーの中でもまだ最新章をクリアできていない人も散見している。ほぼ毎週youtubeで行われているヘブバン生放送では、ある程度のスパンでアクティブユーザーのコンテンツクリア状況をグラフ化して開示しているのだがメインストーリーを全てクリアしたユーザーの割合は非常に高いとは言えない。(こんな情報を開示してくるソシャゲって聞いたことないけどほかにあるのだろうか?)

プレイヤー間ですらこの状態なので、どの程度まで話すべきかというのは非常に悩ましい点であり、もはや未プレイヤーに対してはオススメをするにも「シナリオが良くて……マジ泣けるんすよ…」って上っ面をなぞったような使い古された言葉しかできないのが辛いところである。そんなんでプレイしてもらえるわけないだろっていう事も理解してはいるが。

そして何より弊TwitterアカウントのTLにはヘブバンのプレイヤーを見かけないというもどかしさ。しかし、こんなめっちゃ面白いゲームを俺はお先に楽しませてもらっているぜ!!という歪んだ愉悦の心があるのも事実である。
とはいえこれ以上更にドカン!!と盛り上がって大手を振ってネタバレ込みで話をしたいというのは正直な気持ちである。それにはアニメ化が最も近い手段だろうけど、上記でも書いているようにこのゲームはゲームとしてのシナリオへの没入感に重きを置いている。何せ月歌として朝から夜まで過ごすをDay~と繰り返していくことでキャラクターへの思い入れを蓄積させていくゲームだ。

この寝顔、守りたい

このゲームの空気感をパッケージジングしつつ、30分×?クールという形式でアニメ化しろというのは至難の業だろうなぁという気持ちである。劇場映画形式ならワンチャンあるか…?

さて、ここまで約7000字、呪詛のようなものを吐き出してスッキリすることが出来たし、今回はこのあたりで筆をおきたいと思う。何言ってるか未プレイの人には理解が出来なかったと思うがそれでよい。『このゲームはこういうとこが良いんですよ。」という点も前半分で伝えることができた。(と思いたい。)
以上、ヘブンバーンズレッドへクソデカ感情を抱くオタクの報告であり、このめっちゃ面白いゲームに対しを独り占めできている反面、この面白さを他者と共有できないしんどさという二律背反の心から『最上の、切なさを』を抱えるオタクの報告である

この記事が参加している募集

全力で推したいゲーム

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?