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2021年版・注目SaaSスタートアップ資本政策8選

久々の資本政策コーナー。約1年ぶりのSaaS特集です。

このコーナーは地味に人気で、単品課金で売れ続けています。

前回の2020年版・注目SaaS8選の記事は2020年3月に出しましたが、8社中4社が次のラウンドに進んでいます。

カケハシ(2020/10/12)C?で18億調達:記事
HR Brain(2020/12/4)E?で10億調達:記事
LegalForce(2021/2/17)C?で27億調達:記事
matsuri tecnologies(2021/2/6)B+で5億調達:記事

この資本政策記事で私がピックアップする企業はIPO確度が高いと思っている企業群で、IPO速報記事を書く際に資本政策データを予め整備しておくと楽だから。という裏の理由もあって、たまに制作しています。

2020年版の8社以外の企業群で今年もお届けします。

上場市場SaaSのPSR:売上成長率30%台なら未上場のレイターラウンドでPSR15倍くらいが妥当か

今年の記事では未上場SaaSのバリュエーションを考えるにあたり、上場市場では現時点でどういう評価をされているかの分析も踏まえて考えてみます。

国内上場市場の主要SaaSの直近の数値は下記の通り。

スクリーンショット 2021-06-06 10.42.09

左が時価総額順、右がPSR(今期会社予想ベースが基本)となる。時価総額500億未満はスルーで良いとし(一応ヤプリは入れた)、13銘柄とした。

PSRはウェルスナビ(金融だが積立がほとんどなので、事実上のSaaSとして分析対象に入れた)とフリーが40倍台。サイボウズ、ユーザベースが10倍以下とか、上場市場ではかなり差がついている。

上場市場では原則的に「企業価値に対して適正株価である場合はほとんどなく、常に割安か割高である」と認識した方が良い。株価とはそういうもの。

一般的にはまだ赤字であることが多いため、上場市場でもPERではなくPSRで語られやすい。そして上場市場の性質としては売上成長率が高い銘柄に資金が集まりやすい。未上場市場と異なり、誰でも株が買えるという点と、「株式市場は美人投票理論」の二点がその裏付けとなる。

人気が加熱するときは、凄まじく株価が上がっていく。逆も然りで、不人気銘柄は実力以下の評価しかされない。

YonY成長率は決算説明会資料や短信でも強調されやすい数字なので、そこに目が行きやすい。しかし、株価変動が激しい上場市場では「YonY」より「QonQ」成長率が重要で、YonY成長率よりもQonQ成長率とPSRに相関が見られる。それが右側の表だ。

Yonで見ても売上成長率30%を超えるのはウェルスナビ、フリー、ヤプリ、マネフォ、プレイド、ラクスくらいで、特に40%を超えるウェルスナビとフリーに相対的に資金が集まりPSRが高くなっているのは、株式市場の構造を踏まえると、理解できる話である。

先日のツイートの話は、それです。

多少季節要因もある銘柄があるとはいえ(例.マネフォはイベントで売上が膨らむ四半期がある)、SaaSは基本的に有料企業数/ID数を積み上げるビジネスで、QonQで売上が増加し、ARRが増えていくのが普通である。

QonQで季節要因なくマイナスの場合、新規獲得より解約の方が多いわけで、AI Insideのような「QonQマイナス」はSaaSにおいては異例事態である。

上場市場と未上場市場の交差点といえるIPO公募価格でのPSRも確認しておきたい。

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対象企業13社の中で最近IPOがあった5社の数値を並べたものがこちら。ウェルスナビのPSRとYonYは高いのであまり参考にならないが、売上成長率30%台であればPSR12〜15倍程度が公募で付けられている。

プレイドやヤプリの初値がそれぞれ1.99、1.66倍上昇したという点からも、慣習となる「IPOディスカウント」は若干入っていたのではないか。現時点で同じく売上成長率30%台のマネフォやラクスのPSRが18倍前後であることを見ると、それくらいの公募の値付けもアリだったように思える。

中間値を取ると、売上成長率30%台あればPSR15倍は付けて良いのではないか。と上場市場、IPO公募価格から見ると、そう感じられる。

ただ、これはウィズコロナ禍による金融相場でグロース株の評価が釣り上がった結果ともいえ、今後テーパリング懸念による金融相場縮小、業績相場への移行の中で、SaaS全体としてこのPSRが妥当とは言い切れない。

むしろ、バリュエーション・コントラクション(≒PSR圧縮)が起きる方が自然だと思われる。

今回の記事では一旦は「(今期会社予想)売上成長率30%あればPSR15倍」という一つの基準を儲け、そこからARRの推測もしてみようと思う。

注記:未上場企業の資本政策は各社謄本から作成。株式種類は謄本記載の優先株式名を使用

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