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コニャックと、女

私、チョコレートをつまみにコニャックを飲みながら、絵を描くのが好きなの

もう名前も顔も思い出せないが、昔、そんな洒落たことを言う女と、東カレデートで出会ったことがあった。

僕は、あまり酒を飲まない。

遺伝的に弱いという理由が大きく、ビール、ワイン、シャンパンは特に飲まない。和食屋や鮨屋なら日本酒を、それ以外ならハイボールなら飲める。特に、イタリアンやフレンチに行くと、ほぼワインかシャンパンというラインナップに困り果てることがある。

そんな僕は、コニャックやブランデーをほとんど飲んだことがなかった。

ブランデーを調べると、蒸留酒であり、世界三大ブランデーは「コニャック」「アルマニャック」「カルヴァドス」だということを知った。コニャックは、ブランデーの一種である。

カルヴァドスは林檎ベースだということくらいは知っていたが、コニャックは白葡萄で2回の単式蒸留、アルマニャックは白葡萄で1回の蒸留だそうだ。

全くの無知のまま調べていくと、コニャックはどうやらヘネシーやレミーマルタンが有名らしいということを知り、ヘネシーXOがスタンダードなようだった。

パレスホテルのラウンジで初めて会ったコニャックの女は、初対面で冒頭の話を持ち出した。

偶然にも来週誕生日だという。それなりに話が盛り上がり、次回は食事でも。ということになった。誕生日明けに手ぶらも無粋だろうと思い、ヘネシーXOを買っておき、天現寺のアッピアでのディナーの後、三田の自宅に誘った。一応、パスカル・ルガックのチョコレートも用意しておいた。


コニャックの女とは後日もう一度だけ会ったが、その後お互い連絡を取ることはなく、自然消滅となった。

自宅に残ったヘネシーXOが、僕に残る彼女のほぼ唯一に近い記憶となった。

普段僕は、自宅で一人で酒を飲むことはない。

サッカーが好きな僕は、日本人選手が増えたプレミアリーグをいつしか生放送で見るようになった。ABEMAで三苫選手のブライトンの放送があり、24時前後からと欧州サッカーではまだ見やすい時間帯の放送が多かったためだ。

その際に手持ち無沙汰で、残ったヘネシーXOをバカラのロックグラスで飲み始めた。

30mlをロックで30分ほどかけて飲む。いつしか、プレミアリーグ観戦の際にはヘネシーXOが習慣化し、ボトルを飲み干し、自分のためのヘネシーXOをAmazonで買った。ヘネシーに合いそうなボンボンショコラ探しにも出かけ、ジャン=ポール・エヴァンあたりに合わせるのが自分の好みだと知った。

ヘネシーXOを飲み干した後は、レミーマルタンXOも試してみたが、なんとなくヘネシーの方がまろやかな気がして、ヘネシーの方が好きだった。


3本目のヘネシーを買う際に、より高級なラインはないだろうかと探したら、ヘネシーパラディを見つけた。その上にはリシャールというラインもある。

ヘネシーXOは2万強だが、ヘネシーバラディは売っているお店も少なく、ざっくりと15-18万円くらいだった。2万円ならまだしも、15万円の酒を自分で買って飲んだことはなく、Amazonでポチるのも気が引けた。

友人の助言もあり、ヘネシーパラディを扱うBARで試し飲みしてみることにした。ネットで探し、都内のBARを何軒か当たったところ、リッツ・カールトン東京のBARで扱いがあった。

30mlで1.47万円のヘネシーパラディをロックでいただいた。

正直、最初はXOとの違いがわからなかったが、丸氷に溶けていく中で味わっていくと、XOより角がないまろやかな味わいに思えた。XO自体もそれなりにまろやかに感じたつもりだったが、XOと比較するとパラディの方がまろやかだ。

HPから商品紹介を引用してみると

XO:1870年、世界で初めて“eXtra Old”の名が与えられたコニャック。上位4地区のブドウによる約100種類のオー・ド・ヴィー(原酒)がブレンドされ、リッチでパワフル、かつ極めて滑らかなスタイルが表現されています。

パラディ:貴重な最高格付けのオー・ド・ヴィー(原酒)をブレンドした傑作、ヘネシー パラディー。その味わいは柔らかいベルベットを彷彿とさせ、豊かな余韻が漂います。

「極めて滑らか」と「柔らかいベルベッド」、という違いになるそうだ。

ベルベッド。

興味深い表現だな、と思った。

さらに調べると、コニャックやヘネシーはバブル期の方が国内では消費されていたらしく、銀座のクラブではメロンにかけて味わうという、豪快な嗜み方もされていたらしい。


自分でパラディを買うのはまだ早いと思い、プレミアリーグのお供には、3本目のXOを買った。


相手の名前や顔や存在を忘れても、僕はもうコニャックやヘネシーを忘れることはないだろう。

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