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国境の夜想曲から…安心して眠れる日がきますように…


渋谷に向かう井の頭線の急行は満員電車だった。
あんなに混雑した電車に乗ったのは何か月ぶりだろう?
もしかしたら何年ぶり?
どこかに出掛けたくなるような
ふんわりとした優しい空気に包まれた三月の土曜日の朝
そんな空気と対極にある、緊迫した空気感が漂う映画を見に行った。

「国境の夜想曲」

ジャンフランコ・ロージ監督により3年以上の歳月をかけて、イラク、クルディスタン、シリア、レバノンの国境地帯で撮影されたドキュメンタリー映画。
こういった映画は私にとって、興味はあるものの、「時間があったら見てみよう」と保留にしたまま、見ないで終わってしまうタイプの映画。
けれど、ロシアとウクライナのことがある今、
これは見逃してはいけない!必ず見ておかなくては!
そんな気がしたので見ることにした。

気持ちの良い春の日に、こんな重たい映画を見に渋谷まで来る人は
とても少なかった。
こんな日に、わざわざ、
こんな映画を見に来る人って…
なんとなく「運命共同体」な気がした。
興味を持たなければ見逃してしまうような映画だろう。
同じような思いがあるから、見に来たのかな?
斜め前の人も、後ろの席の人も、席を二つ空けたお隣さんにも
親近感を感じた。


撮影は危険に満ちていただろう。
「よくこんな映画を撮ることができたなぁ…」

銃声が鳴り響き、目の前で普通に人殺しが行われるその場所にも
太陽はかわりなく朝になれば登り夕方には沈む。
悲惨な現状でもそこに暮らす人たちがいて
私たちと同じように日常生活を送っている。
そこに生まれてしまったがために。

子供を拷問で殺された母親の嘆き
捕まってしまった子供からのSOSの伝言メッセージ
爆撃で真っ赤に染まる空の色
目の前で起きた忌まわしい出来事のことを話す子供

哀しくて辛すぎて感情を感じられないくらい透明
ただありのままの「大自然」の姿
どんなことが起きても「自然」はいつだって「自然」
途切れることなく続いている
再生している力強さ

子供たちが描いた絵を見ながら、何が起きたのか話すシーンが
一番印象的だった。

この映画は闇の映画ではない光の映画だと
ジャンフランコ・ロージ監督はいう。

目をそらしてはいけないんだと思った。

映画の中で見た場所は辛く悲しみに満ちた場所に感じたけど

映画館を出た後
人が増えた…と言っても、コロナ前の半分くらいの人込みだとしても
渋谷の街は
わたしにとっては辛く、息苦しい場所に感じた。

早く家に帰りたかった。
一刻も早く、安心する場所に戻りたかった。

映画に出てきた国境付近の街に安心が訪れるのはいつのことだろう。
ウクライナとロシアの人たちが安心して眠れるのはいつだろう。

一日でも早く、そんな日がくることをただただ祈った。




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