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299冊目:心淋し川/西條奈加

こんばんは、Umenogummiです。



今日は直木三十五賞受賞作品です。



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心淋し川/西條奈加 作



あらすじ


千駄木町・心町(うらまち)を流れる心川(うらがわ)を中心に繰り広げられる6つのオムニバスストーリーです。

心淋し川(うらさびしがわ)
心町を出たいと願うお針子・ちほの恋のお話。

閨仏(ねやぼとけ)
青物卸の大隅屋六兵衛の妾4人が暮らす家で、年長の妾・りきがとある趣味に目覚めるお話。

はじめましょ
飯屋「四文屋」を営む与吾蔵がたまたま立ち寄った根津権現で懐かしい歌を聞き、歌を口ずさむ少女・ゆかとの触れ合いをがいたお話。

冬虫夏草
身体は不自由だが四六時中暴言を浴びせる息子・富士之助を世話するの息子への愛情と過去のお話。

明けぬ里
元遊女だったようが、同じ妓楼だった当時遊郭一の美女・明里と再会し、過去を思い出して、語り合うお話。

灰の男
差配(所有者に代わり貸地・貸家などを管理する人)・茂十の過去話。なぜ彼がこの心町で差配をしているのか、唯一全篇を通して登場する茂十と楡爺と呼ばれる呆けた爺さんのお話。



感想


さらっと読める割に心にずしんとくる重厚な短編集です。

私は特に「閨仏」が好きですね。ほかのお話ももちろん面白いんですが、どこか影があって気持ちが沈んでしまうんですが、このお話は、主人公のりきの性格もよくて、話自体もそこまで暗いものでなく、前向きで気持ちよく読むことができます。前半の残り2篇、「心淋し川」「はじめましょ」も新しい始まりを感じさせる終わりではあるのですが、前者は主人公のちほの気持ちがどうなのかなーというところが引っかかってしまいます。後者も良い話ですが、「閨仏」ほど嵌らなかったというか。

後半3篇は暗くて重いです。「冬虫夏草」母親の愛情とは…と考えさせられます。「明けぬ里」は途中まではすらすら読み進められて、しかし衝撃のラストが。個人的にはどうしてこうなった的な2篇ですね。

最後の「灰の男」はとにかく切ない。全編を通して町の差配として頼られ、しっかり者の茂十が、実は凄惨な過去を抱え、この心町へはある目的でやってきて…その結末はただただやるせないです。「冬虫夏草」で吉がちらりと茂十の過去について触れますが、まさかこんなに凄まじいものだったとは。


全篇クオリティがとても高くて、面白かったです。だいたい1篇くらい外れがあるんですけど、この作品にはそんなものはありませんでした。

直木三十五賞受賞も納得の作品です。



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直木三十五賞ノミネート作



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