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「佛界易入魔界難入」

「佛界易入魔界難入」


川端康成が好んで引用したことばである。この言葉を筆でも描いた。彼は筆で描くときにわざと左手を用いたと聞く。それを描いた書の小さな写真が私の自宅に貼ってある。

だが、この言葉の内容は額面通りに受け取るわけにはいかぬ。

無論、否定するつもりは毛頭ない。ただ佛界に入れば嫌でも魔界には意識的に参入する。もし魔界に入らぬとすれば未だ佛界には至っていないからである。

この言葉の内容の視点を変えて深読みすれば、己を悟ったと称する人物達、象牙の塔に籠る、佛識者に対する自他も含む厳しい自戒を込めた批判であろう。それ以上でも以下でもない。

この言葉の意味するものを今日識者と称する人物達はよくよく噛み締めるべきであろう。是又、是非も無しであるか。

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