見出し画像

「自分が想像できない世界を見たい」職業旅人。”自分が幸せで、周りも幸せ”をつくり続ける僕の生き方 おのわたる


おのわたるさん
Instagram@orewataruono

愛知県出身の24歳(当時)。特技は一点倒立と、火を噴くこと。職業は旅人だと語るおのわたるさん。
中学高校で理科の教員として勤めながら、東京の教育系NPO法人で外部から学校教育に関わったり、東海地方のコミュニティや、旅をテーマにしたコミュニティ(世界一周大学)の運営に携わるなど、多岐にわたって活動しています。日本のみならず世界を旅し続けるおのさんの、その原動力や人生のテーマについてうかがいました。


恐怖よりもワクワクが勝つ冒険


自分が知らない世界を見たいという気持ちで、世界を旅するおのさん。アフリカ縦断旅に挑戦するなど、危険とわくわくが隣り合わせの冒険が大好きだと話します。

「一昨年に東南アジア、フィリピン、アメリカと訪れて、もっと色んな国に行きたいなーという気持ちがあって。ずっと、アフリカには興味があったんです。その世界が想像できなさ過ぎて(笑)非常勤の高校教員なので、夏休みで長期で旅できるタイミングがあったのと、砂漠や火山、動物にも出会いたい気持ちがあった。そして何より、人生の中のチャレンジとしてもおもしろいよなぁ、と思って、よし冒険しに行こう、と決めました」

危険な地域などでも、旅をする際は、一人で行く方が圧倒的に好きだと言います。

「その理由の1つは、自分の行きたい時に行きたい場所に行けて、そこで出会った好きな人たちと一緒に旅できるからです。自分のペースで、自分の力だけで、運を寄せて、出会いを寄せて。想像できない世界が広がっていくのがすごく好きなんですよね。もう一つは、一人になると考える時間が生まれるという理由です。一人の時間にしか辿り着けないものがあるし、自分の人生をより深く考えられて、すごく好きな時間です」

治安が悪い地域や、生活環境が整わない場所にも単身で挑んでいくおのさん。「恐怖を感じることもあるけど、最終的にはなんとかなってきた」という経験が彼を動かしているそうです。

「本当に死を想起する恐怖を感じることもあります。アフリカのケープタウンという場所にいた時、ちょっと冒険しようと思って、危険だと言われている夜の街を散策したことがありました。脇道に入ったところで、仲良くなった男の人と談笑していたら、『お金くれよ』と言われて。まぁ、よくあることなので、『ごめん、お金ないんだ』と答えると、彼のパーカーのポケットから拳銃が出てきて腰に突きつけられたんです。これはやばい、と思って、ダミーの財布と携帯電話と所持品をすべて渡して解放してもらったんですが、さすがにこればかりは、死を覚悟しました。でも、こういう怖い経験もたしかにあるけど、不思議とわくわくの方が勝つんです。全部なんとかなったし、なんとかなる。まぁ、僕が一番怖いのは高いところなんですよ。歩道橋とか絶対登れない(笑)(※危険な目に遭わないようなリスクマネジメントはこれから自分もしますし、皆さんもしてください)」

いろんな生き方に出会えば、人生が広がる

そんなハラハラドキドキする冒険を続ける旅人のおのさんは、私立中学校、高校で教員をしています。教員を目指したきっかけは、自身の高校時代、サッカーチームに所属していた時のケガの経験にあると言います。

「僕は、幼少期からずっとサッカーを続けていて、高校生の時も学校とサッカーチームの往復をするような生活をしていました。でも高校2年の冬に、オーバーヘッドをした際に背中から落ちて、背骨の腰椎を骨折するという大ケガを負ってしまったんです。半年後に高校最後の大会が待っているのに、人生が終わったと絶望しました。悔しい気持ちもありましたが、プレイヤーとしてではなく、チームをサポートするポジションを与えてもらい、これは自分がチーム全体を盛り上げていくことができると切り替えることができました。この時に、プレーヤーとしてだけではなく、サッカーという競技に関わること全体を楽しめるようになりましたね。もともと何かを教えることが得意で、サッカーに関われる教員という仕事に興味をもって、教育大学に進むことにしました」

高校卒業後、愛知教育大学に進学したおのさん。大学では、多種多様な生き方をしている人達に出会い、自分の知らない世界が広がっていく面白さを感じたと話します。様々な生き方を知る中、大学3年生になった時、「どうして自分は教師になりたいのか?」という問いについて、もう一度考えたそうです。

「自分の進路について考えた時、僕は、高校時代に教員以外の大人と全く関わってこなかったことに気が付きました。大学でいろんな大人に出会って、こんな生き方があるんだなとか、かっこいいなと思ったけど、自分は高校生の時に、教員しか知らなかったから教育大学を選んだのかもなぁと思ったんです。もし、自分があの時に、もっと色んな大人たちに出会えていたら、違う人生を選ぶこともあったかもしれないなって。それなら、僕が高校の先生になって、いろんな生き方を届けられる人になろうと思い、教員になることを決意しました」


想いを伝え続けた成功体験。アメリカへ教育視察

大学では、理科や物理の分野について専門に学んでいましたが、ある教授の授業がきっかけで「教育の評価方法」について興味が湧いたと話します。

「大学の講義の中で、ある物理のテストがありました。『あなたは宇宙開発チームの一員です。X,Y地点に物を落としたいです。空気抵抗があると想定して問題に答えなさい』という問題と、白紙を渡されたんですよ。その時はまだ、空気抵抗をならってない段階だったのですが、問題が出された後に新しい知識を投げられて。今までの知識プラス、今習った新しい知識を使って考えて、あなたの考えを説明してくださいと言われました。今まで、見たことのある問題をひたすら解くようなテストしかやったことがなかったので、全然違う学び方だなって思って、とても面白かったのを覚えています。教授に、話を聞くと、
『今は知識を覚えるだけならAIが担える。人間にできるのは、知識を使って0から1を生み出すような思考だ』と答えてくれて。そこから、知識や技能だけでなく、思考力や表現力を伸ばす評価方法について興味を持ち始めました」

この世界にないものを生み出す力を伸ばすことができたら、この世界はもっとおもしろいものになっていくと確信したおのさん。評価方法について研究するため、そして自分の世界をもっと広げるために大学院に進むことを決意したそうです。

大学院に進んだおのさんは、評価方法についての研究を進めるためアメリカに留学したいと考えていました。最先端の教育方法がとられているという理由で、大学院側にも留学したい意思を伝えていましたが、結果はことごとく却下。その後もコロナの影響で海外へ出ることを断念せざるを得ず、もどかしい日々を送っていたと言います。

「でも、大学院2年(M2)の時に、『留学に行けなかった大学生』としてテレビの取材に答える機会があったんですよ。僕の思いや、悔しさを全部語りました。そしたら、それを見た大学側が、「そんなに行きたいなら、おの君行ってきていいよ」と言ってくれて、そこからガッと状況が動いて。新しい視察プログラムを作るための偵察部隊として、アメリカに行けることになったんです」

念願の夢が叶い、2022年の秋に、愛知教育大学の教授二人に同行する形でアメリカに渡ることになったおのさん。アメリカの大学の教授も含め、4人で10日間の視察を行ない、大学や小学校、幼稚園、科学館などあらゆる教育機関を見学。自分の意思を伝え続けた成功体験にもなり、大学側としても研究が進む大きな機会になったそうです。視察を通して、実際に目で見て、感じたからこそわかることがいくつもあったと語ります。

「行く前は、アメリカの教育方法に対してすごくポジティブなイメージだけを抱いていました。世界最先端の教育方法をとっている国ならば、日本よりもすべてが優れているのだろうと。でも、実際に訪れてみて、日本の形にも良さはあるなということに気づきました。例えば、放任と責任の観点です。アメリカは自由の国なので、生徒の好きなタイミングで、好きな場所で、好きなように授業を受けることができます。生徒の自主性に任せていて良いところもありますが、一方で先生たちが放任的だという印象もありました。日本のような一斉授業の際も、生徒は授業内容とは関係ないことをやっていたり、聞いていなかったりもするんです。それが果たして、本当に力をつけられているのか、というのは、少し疑問を感じるところでした。それが良いとか悪いとかではなく、日本のやり方にも良いところはあるなと再認識できましたね」


自分の知らない世界を見せてくれる人に出会い続ける

アメリカから帰国した後、大学院を続けるか卒業するかギリギリまで悩んだ結果、ご縁から私立の高校の非常勤講師として働くことに。初めは、担任としてクラスを持てないことを懸念していたそうですが、実際に授業をもってみて、自分に合った働き方ができていると感じていると言います。

「僕の担当が10クラスあって、それぞれ毎週授業をもっています。僕の旅の話や、僕の周りのおもしろい大人の話をすると、1クラスに、数人ずつが僕に興味もってくれる。それが集まるとだいたい1クラス分くらいの人数になります。僕と合うな、と感じてくれたその子達に想いが届いたらいいなって思うんです。例えば、担任としてクラスを持っていたとしても、クラスの全員が僕とぴったり合うわけじゃない。相性もあるし、興味関心事も違う。授業によって先生のカラーがあるから、その中から自分にぴったり合う先生を見つけられるのは、高校の良いところだと思いますね。僕としても、非常勤で時間もあるから、生徒たちと深く関わることができているし、自分にはこれが合っているなと感じています」

実際の学校現場の様子も感じ、「高校生にいろんな生き方を見せる」ことも進めて来れたそうです。しかし、働く中で「自分のやりたいことは学校教育にとどまらず、もっと外にも広げられる」という思いが湧いてきたと言います。

「僕、最近、教育教育言わなくなったんですよ。学校だけにこだわってない感じがすごくある。僕の想いのど真ん中にあるのが、『おもしろい世界をつくる人がたくさん生まれたら自分の世界がおもしろくなる』、なんですよね。おもしろいっていうのは、自分が想像できない世界を見せてくれる、という意味です。そんな世界を見せてくれる人がいっぱい増えたら、すごくわくわくしませんか?」

自分が知らない世界を見せてくれる人に出会うため、「越境」というキーワードを軸に、3つの柱で動いていると続けます。

「僕の活動のテーマは『越境』。境を超えるという意味です。多分野、多世代の人達が、出会うと新しいイノベーションが生まれると思っています。そこで、自分が想像できない世界が広がっていく。その『越境』をつくるために3つの活動をしています。

1つ目は、今まで述べてきたように、学校で高校生に教員以外の大人との関わりをつくること。
2つ目は、教員や教員の卵にも、おもしろい生き方をしている人と出会う機会をつくることです。先生たちって、忙しいし、学校という世界でしか生きてこなかった人が多いんです。子どもに関わる先生自身が、『こんな世界もあるんだ』と知ることができれば、子どもたちにもそれを伝えることができる。そしたら何百人という子どもたちの世界を広げることができる。そんな場を設ける活動をしています。

最後の3つ目は、学校以外の場所で、今なにかチャレンジしている人のサポートや応援をすることです。自分が一緒にいてわくわくするような人と関わっていたいし、人と人を繋げるためには、まず自分がおもしろい生き方をしている人と出会うと、それが加速すると思うんですよね!そして、僕が好きなのは、そういう各地で出会ったおもしろい人達を一つの場所に集めることです(笑)多分野、多世代が繋がる場所をつくることで、『越境』が起こって、おもしろい世界をつくってくれる。自分も楽しいし、みんなも楽しんでくれてるし、想像できない世界が広がっていく感覚がすごくあるんです。それが本当に、わくわくするしおもしろい」

「例えば、今、古民家でゲストハウスをやっている知り合いに協力しているんですけど、僕が繋がったある子が、そこでカフェをやれることになったり、今やりたいことがわからない子も、色んな人に出会うことで『何となく、それやりたいかも』を見つけられたり。そういう事が起こるのがとても嬉しい。僕がしてることが、今すぐ何かにならなかったとしても、それでいいと思います。数年後、ひょんな事からつながったり、『あの時のあれがあったから、今日に繋がってる』なんてことがいっぱい増えたらいいなって。
だから、僕がやってることは別に教育ではないんですよね。高校生の人生を広げたい、と思ったところから、もっともっとスケールが広がった。今自分は、自分の周りの人達にこれを届けているんですけど、それが本当に、すごく幸せなんです。あぁ、これが自分のやりたい事だなって心から思います」


自分が想像できない世界を見たい

人と関わること、旅をすること。自分の知らない世界を見たいという好奇心で、様々な活動を続けるおのさん。次の目標は、『世界一周を大陸別でやる』事だと話します。

「ずっと世界一周はしたいと思っていたんですけど、ぐるっと一周して帰ってくるよりも、大陸ごとに、2ヶ月いって帰ってくる、みたいな旅をやりたいなぁと考えています。短期間で、より密度の濃い旅をしたいという想いがあって。一周して帰ってくると、最初に訪れた国での体験や出会いや思い出が薄れてしまうような気がするんです。そうはしたくない。自分の経験をじっくり深めて、帰ってきて、また次の大陸で深めて。と、そういう旅を計画しています」

次に行きたいのは南米だそうです。ウユニ塩湖やリオのカーニバルを見るために、計画的にスケジュール調整をしていると話します。

「行きたい、行こう!という気持ちはあるんですけど、意外と計画的な面もある人間なんですよ(笑)いったんお金を準備して、スペインにワーキングホリデーで一年滞在してスペイン語を学ぶ計画をしています。そしたら、南米でスペイン語も話せるし、より旅が良いものになるかなって。アフリカに旅をした時に、出会ったスペイン人たちがみんな本当に良い人ばかりで、スペインが大好きになったんです。サッカーも好きだし、スペイン語が話せたらおもしろいし!それ、いいじゃん!って」

旅をする中で、いろんな人に出会い、対話し、自分を深めているというおのさん。人と人を繋げたいなら、まず自分を知ることが大切だと考えているそうです。

「人が好きで、話すことも好き。そして、世界を開拓したいという気持ちがあります。まだ見ぬ世界に飛び込んでいくと、いろんな分野の人に出会うし、そのたびに自分という人間がわかっていく感覚があります。自分の考えを伝えると、僕に共感してくれる人もいて、すごく嬉しいし、活動がさらにおもしろくなっていきます。自分自身の発信もするけど、僕の周りのおもしろい人たちを紹介するのも好きなんです。いろんな人たちがいるのを見て、おのわたるに関わるとおもしろいことが起こるかもと思ってくれる人がいることも嬉しいですし。とにかく、楽しい気持ちでいる人の周りには、人が集まりますからね!」

おのさんが人生で大切にしていることは、「自分が楽しむ、自分が一番幸せであること」だと語ります。

「僕は、周りの人と一緒に幸せを感じられることがすごく嬉しいです。そのためには、まず僕が楽しいこと、幸せなことが一番大事。僕の発信などを見て、おもしろそうと思ってくれた人がいたらぜひ絡んできてほしいです。多分野多世代の人達ともっと繋がりたいし、せっかく、ここで出会えたなら、ぜひぜひあいたいです!」

これからも、自分の知らない世界をもっともっと見ていきたいと話してくれました。

編集後記
おのさんのエネルギーは、出会った人を元気にハッピーにするなぁといつも思います。猪突猛進に見えて、実はものすごく思考して計画している。その聡明さがあるからこそ、人に優しくできて、人から愛される。そんな人間性にとても惹かれています。「みんなと幸せを感じたいなら、まず自分が幸せであること」という言葉は、今の自分にもすごく刺さるものがあります。インタビュー時に、おのさんが「今が人生で一番楽しい」と答えてくださった笑顔が、すべてを表していますね。これから先の冒険も、ぜひ楽しみにしております!
おのさん、貴重なお時間ありがとうございました。
(インタビュー・編集・イラスト By Umi)



この記事が参加している募集

一度は行きたいあの場所

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?