こいのぼり

わざわざ授業の紙をプリントするためにコンビニに来て、プリンターの前に立ったのに、小銭しか入れる場所がない。生憎、お札しか持ってない。でもそれだけのために何か買うのも躊躇う。しょうがないから隣のATMから何百円か引き出そう。そして気づく。逆にATMは、お札しか引き出せない。なんだこの構造は。
もういいや。オンラインだし、紙がなくてもやっていけるだろ。そして出口に向かうと、無料配布雑誌の表紙の高橋一生と目があう。あーあ、こんなとこで帳尻を合わせられた気がする。


気を取り直すこともできず自転車に乗る。目の前の小学校のグラウンドには、何家族分だよと思うくらい大勢の鯉たちが泳いでいた。小学校にいると嫌でも季節を知らされることを思い出した。そして、「友だち100人できるかな」の歌。何でこの歌がグラウンドで盛大に流れているのか全く分からない。誰もいないグラウンドで甲高い声がこだましている。これの音漏れを教室で聞いている児童はどんな気持ちなんだろうか。


もやもやしながら走らせる。わざと出口専用から駐車場に入る。そして、わざわざ斜めに止めることで、駐輪場の場所を多く使う。とは言っても他には3台くらいしかないのでくだらない抵抗。ここは大人しく入口から店に入る。
近所のスーパーで売っていなかったごぼうと梅干しを買いに来た。まずはごぼう、ごぼう、ごぼう、、ない。は?ごぼうのないイオンとか存在すんの。かなり広めで良くわからない野菜は沢山ある。しょうがないから根菜類のところを3周した。ない。
梅干し買おう。何で梅干しはこんなにあるんだ。適当に買ってしまうと、五粒くらいしか入ってないのに千円越えだったりするので慎重に選ぶ。決めてレジに向かう。
並ぶと隣のレジの人が呼んできた。これだけですかって言われてもそうですけど。てかこのスーパーごぼうないって正気ですか。とは言えなかった。支払いを終えてむかむかしながら梅干しをトートバッグに突っ込む。高橋一生の顔が歪む。こんな気持ちになるなら貰ってこなければよかった。
早く帰ろう。目に止まるのは菅田将暉の広告、また帳尻合わせに足元見られた気がする。せめてもの反抗心で入口専用のドアを開けた。