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ネット詩誌 MY DEARに投稿しました。

優先席

         

さっと席を立った女性がいる

降りるのかと思ったら

どうぞ と席を譲られた

ドキリとした

 

その女性に頭を下げて

席に座ると

バスは動き出した

高齢者優先席と書いてある

 

その年齢に達しない人が

おしゃべりしながら

座っていて

譲ろうとしない席でもある

 

吊革一つあれば

まだ立っている事ができるが

この席は高齢者ばかりが

座る席ではない

 

子どもを連れたお母さん

妊婦さんや体調が悪い人や

車椅子の人など

人の情が交わる席だ

 

次の停留場で

私より高齢と見られる人が乗った

おしゃべりは

まだ続いている

 

私は立ち上がって

どうぞ とその人に席を譲った

席を譲られた者が席を譲る

自然な事なのだ

その女性と目があった

 

人の情が交わる席で

譲り合いができない

おしゃべりし続けていた人は

心に何を残したのだろう

 

下車するブザーを押した

その女性もブザーを押した

偶然が二つ重なった

乗降口は一つだ

 

 

久しぶりにバスに乗った

優先席一つの出来事だったが

考える宿題を

たくさん持ち帰った

 

席を譲ろうとしない人にも

今ではないが

優先席は用意されている

それが見えないだけなのだ

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