詩人会議10月号に投稿しました。掲載されるかどうかはわかりません。

海を飲む
         
魚たちが海を飲んでいる
小舟に乗って
釣り糸を垂れてはいるが
騒がしい日常の中で
ときどき波が荒れたりする
メルトダウン時には 
大量の放射能が降り注いだが
海は汚れているという人も
今は 釣り糸を垂れている
それでも海は空の色を真似
空の色は海の色を真似ている
海を飲む魚たちは
釣り糸を垂らせば食らいつく
クーラーボックスを見ながら
ときどき にやりとする
気にする人と気にしない人の
今夜の夕食の献立は
もしかすると違うはずだ
小舟の揺れに委ねるように
釣り糸も海の中で揺れている
その先が いちえふの海だ
海の中の魚に集中している
海底の砂の中に沈む魚もいる
魚たちが海を飲んでいる
小舟に乗って
釣り糸を垂れてはいるが
同船した仲間が釣り上げた
クーラーボックスの魚たちは
夕食の献立となれるように
規則正しく並んでいる
 

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