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詩集

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これから追加されるとしたらすべて新作です。
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2021年2月の記事一覧

ぼくはすっかり昭和のオジさん

歌詞の意味がわからないので 教えて欲しいと姪が言う ♪ 電話の上に重ねたコイン  アドレス破いて  ダイヤル回す ひとつも情景が浮かばないと姪 ♪ レコードに針を落とすわ  だけどB面は失恋の歌  テープなら巻き戻せても  時間は戻せないの 何のことか見当すらつかないと姪 ♪ プルリングを外して  指輪がわりにつけてみる  目深にかぶったサンバイザー  あなたが夕焼けの色になる もうお手上げです助けて解読班! 小学生の可愛い姪に頼まれて 消え去った昭和を語る楽し

普通の人生

百年前 ぼくがいなかったように君もいなかった 百年後 ぼくはいなくなっていておそらく君もいない ぼくたちはたった百年の間の しかも二人でいられるたった数十年を一緒に過ごし たった数十年のうちのたった数年間を 愛し合う時間に使った ぼくたちはおそらく歴史には残らない もう死んでしまった昔の人と言われて一括りにされ 名もなき人の中に混ざり合って最後は消えていく それでいい それが普通の人生 百年後に何も残さない 人々の記憶に長く名前を覚えてもらうことをせず 生きてきた証