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エッセイの箱

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未分類のエッセイを集めました。
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記事一覧

Sweet Memories

「小学校六年生のクラスのメンバーで集まりませんか」 と案内が来たのは、昨年の秋のことだっ…

うみのちえ
20時間前
32

晴海という名の女

同じクラスのヒロシくんから突然、電話がかかってきたのは、高三の夏休みだった。 その頃の私…

44

一瞬と永遠

物心ついた頃から私は、「本ばかり読んでいる子ども」だった。 最初の記憶は、宗教絵本。 自分…

うみのちえ
12日前
59

春の歌

子どもが、小学校高学年だったある日、帰宅してからポツリと呟いた。 「学級委員を押し付けら…

うみのちえ
1か月前
67

ケセラセラ

その日私は、腹が立って泣きたくて、とにかく酷く気分が悪くて、真っ直ぐ帰宅する気になれなか…

うみのちえ
1か月前
68

All You Need Is Love

今年1月に開かれた「甲府市殺人放火事件」の判決公判において、甲府地裁は求刑通り、被告人の…

うみのちえ
2か月前
75

Bling-Bang-Bang-Born

「親の過干渉が、一番いけないんです!」 と、YouTube の人が力説している。 ……アレをしなさい。コレをしなさい。 ……ソレをやっちゃダメ。ソコへ行っちゃダメ。 「とにかく親が口を出し過ぎる。それでは子どもは、何の経験も積めない」 「その通りだよなぁ……」と深く頷く一方で、私の心には、割り切れない思いもふつふつと沸き上がってくる。 私は、親から関心を持たれなかったり、適切なケアがなされないことの痛みだけはよく知っていた。だからその反動で自分が親になった時、子どもへの干

最後のバレンタインデー

「好きです! 付き合ってください!」 と勇気を振り絞って告白し、両手でチョコを差し出す。 …

うみのちえ
2か月前
71

泣いてもいいんだよ

ちょっと飲み過ぎたのかもしれない。 私は娘を前にして、くどくどと言い訳がましく、同じこと…

うみのちえ
3か月前
66

母のうた

noteをはじめて良かったことの一つは、リアルでは決して出会うことのなかった人たちと繋がれて…

うみのちえ
3か月前
84

抱きしめたい

遊園地の野外ステージで、子どもたちと一緒にヒーローショーを見ていた。遠い昔の、とても暑い…

うみのちえ
3か月前
68

やさしくなりたい

電動自転車にはじめて乗った日、私は「他者を追い抜く快感」を、文字通り身を持って知った。 …

うみのちえ
4か月前
59

愛された記憶

「ちえ」という名前は決して珍しくないから、これまでの人生で私は、たくさんの「ちえ」さんに…

うみのちえ
5か月前
74

まっすぐな道

数年前に話題になっていた小説を、最近になって、たまたま手にする機会があった。 『82年生まれ、キム・ジヨン』である。 2016年に韓国で発表されてベストセラーとなり、その後2018年に翻訳出版され、日本でも大きな関心を呼んだ。 また、同じ2016年にドイツで発表された、イスラエルの社会学者によるインタビュー集『母親になって後悔してる』が、2022年に翻訳出版された。 そのショッキングなタイトルに拒絶反応を示す人も少なくなく、肯定的な書評には批判が集まるなど、ひととき物議を醸