【小説 / Episode.1-01】息子が実家に帰ってきました -My son is back-
閑静な住宅街にひっそりと佇むそのカフェは、真壁由紀にとってすぐにお気に入りの場所となった。
まだオープンして1カ月足らずではあるが、南仏プロヴァンス風の外観が目を引くカフェには常に多くの客の姿があった。由紀がパート先のスーパーへと向かう際に通りかかる時も、パート仲間とお茶をするために立ち寄る時も、店内が閑散としていたことは一度もなかった。現に、今日も同僚の成冨朝子に誘われてやってきたものの、席に座るまで40分ほどの時間を要した。荷物を下ろして、店内にあるカブトムシの形を