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【ミニコラム】「好きに生きてみたら?」…独立の後押しとなった言葉を思い出した、2022年沖縄

 先日、沖縄の伊良部島に行ってきました。

 宮古列島を構成する島のひとつである、伊良部島。沖縄を訪れるのは初めてのことで、30歳を過ぎてようやく念願が叶いました。

 今回の旅のテーマは「予定を詰め込み過ぎず、のんびり、ゆっくりすること」。日頃、締切に追われている身としては、アクティビティ満載の旅はちょっとだけ疲れてしまうのです。

 僕が会社員を辞めて独立したのは、今から約3年前。当時、とあるメディアで働いていた僕は、自分の仕事について悩んでいました。それはもう、原因不明の高熱を出し、救急車で運ばれるくらいに。

 ありがたいことに、僕は小さな頃から憧れていた“文章を書く仕事”に携わることができました。でも、好きを仕事にするって、それはそれで結構辛いこともあるんですよね。これは世間でもよく言われていることだと思います。

時々、文章の流れと関係ない旅の写真が現れます。

 好きなものは、何の制約も受けず、ただただ自分勝手に愛でているからこそ好きでいられる。この考えが正しいのかは分かりませんが、とにかく好きなことを仕事にすると「あれ、何だかまったく気持ちが乗ってこないぞ」と、自分の心の中の変化に気付く瞬間があるのです。心の水面に不穏なさざ波が立っていて、今まで好きだったコレは多分好きではなくなってしまうだろうな、という確信めいた予感。

 このまま会社員としてメディアで働くか、それとも独立して仕事の幅を広げていくか。頭を悩ませていた僕に、ある日妻がこう言いました。

「好きに生きてみたらいいんじゃない?」

 活字にすると投げやりな言葉に見えてしまいますが、僕にとっては大げさではなく、福音のように感じられたことを覚えています。もしかしたら、自分はもうちょっとだけ、枠をはみ出すような生き方をしてみてもいいのかもしれない。果たすべき責任を負ったうえで、もう少し我儘になってみてもいいのかもしれない、と。

 その数か月後、僕は会社と相談の上、独立することを決めました。妻は「食べられなくなったら、私が稼ぐから大丈夫」とかっこいいことを言ってくれましたが、独立から3年が経った今、一応自分の仕事で生計を立てることができています。

沖縄でよく飲まれる「さんぴん茶」。ジャスミン茶のことですね。

 伊良部島滞在最終日、宿泊先のコテージの屋上にあるジャグジーを利用させてもらいました。時刻は夜9時過ぎ。あたりに人工的な光を発するものが何もなかったため、頭上にはまさに星が降ってくるような夜空が広がっていました。

 眩暈がしそうな数の星々、そしてどこまでも続くような静かな海を目の当たりにして、僕は少しだけ畏怖の念すら抱きました。この自然が本気を出したら、自分などあっという間に消し飛んでしまうような小さな存在なんだなと思うと、日々の仕事で感じている閉塞感や妙なこだわりなど、どうでもよく感じてしまいました。

「好きに生きてみたら?」

 ちょっとだけ枠をはみ出してみようと思いつつ、結局自分自身で作った枠の中に納まろうとすることも多々あった、独立後の3年間。10月になってもまだまだ暖かい沖縄の地で、僕は独立の後押しとなった言葉を今一度思い出しました。

星空の写真ではないですが……。

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