見出し画像

出産、育児を経験して出会った新しい自分 ライフスタイルモデル・栗原ジャスティーン

3月の「女性史月間」にアンダーアーマーのWOMEN’Sプロジェクトチームは、5人の女性のストーリーをお届けしています。「スポーツを通して女性をエンパワーする」というテーマの下、こちらのnoteでは5日連続でインタビューの全編を掲載。どんな状況でもブレることなく、信念を持って自身の夢や目標に向かって進む彼女たちの姿を通して、スポーツのある生活の素晴らしさや、自分らしく生きることの大切さをお伝えできればと思います。

画像1

第1回の記事はこちら↓

第2回はアンダーアーマーと契約する、ライフスタイルモデルの栗原ジャスティーンさんです。ジャスティーンさんは、「モデルはやせていなければならない」という固定観念を打ち破り、日々のトレーニングによる健康的な身体づくりを通して、ライフスタイルモデルという生き方を確立しました。目標を達成するために、これまで決して妥協することのない取り組みを続けてきたジャスティーンさんですが、出産と育児を経験する中で考え方が大きく変わっていきます。思い通りにいかないことが多い中で気づいた、自分の中の新しい一面。そして今、彼女が世の中の女性たちに伝えたいこと。現在進行形で出産や育児に向き合っている方はもちろん、それらを支えるパートナー、キャリアに悩む女性など、多くの人へ向けたメッセージです。

(聞き手=山下かおる、撮影=源田類)

ジャスティーン2

栗原ジャスティーン
中学生の時にスカウトされてモデル活動を始める。香港や米国ロサンゼルスを拠点に活動する中で、ライフスタイルモデルとしての自身の生き方を確立。トレーニングカルチャーを浸透させるとともに、外見だけではない女性の美しさについて発信を続けている。ベストボディジャパン2015東京大会でグランプリを受賞。

思い通りにいかない自分を受け入れる

―ジャスティーンさんといえば、女性がトレーニングするというカルチャーをつくった先駆者の一人です。あらためて、トレーニングを始めたきっかけを教えてください。

最初は自分の体形がすごく嫌いで、それを変えるために模索した結果がトレーニングでした。アウターラインを変える目的でトレーニングしていて、大会に出て優勝もしましたが、どこかしっくりこない部分がありました。だんだん分かってきたのが、私が求めているのは身体の形よりも内面的な部分の充実だということです。そのためにトレーニングを必要としているのだなと。3年ほど前から、身体の形を変えるよりも、ライフスタイルの中にトレーニングが入ることでよりよい日々を送る、というイメージでやっています。

―妊娠中や子育て中は、計画通りにトレーニングをするのが難しいと思います。ストレスを感じることはありましたか?

妊娠した後、つわりが落ち着いてトレーニングを再開した時には、筋力が低下して、当たり前だったことができなくなっていました。また、産後にトレーニング再開した時も、育児で忙しいため上を目指すことが難しいです。これまで目標を立てたら、必ず達成するというマインドを持って生きてきましたが、初めて妥協というところを認めないといけない状態になりました。でも、生活の中で子どもが一番大事な存在であり、それに勝るものはありません。限られた条件の中で何ができるか考えて、メリハリをつけて時間を使っています。初めて目標に到達しない自分を受け入れられるようになったという意味では、人として強くなっているのかもしれません。

無題

妊婦さんも運動するのが世界基準

―日本では妊婦さんが運動するのはあまり一般的ではありませんが、トレーニングをするのに抵抗はありませんでしたか?

以前に香港に住んでいた時、ジムではお腹の大きな妊婦さんが普通に運動していました。アメリカでも同様で、ジムに行ったり、ヨガをしたりしていました。日本に帰ってくると、妊婦は安静にしなきゃいけないという文化で、ジムでも妊娠していないか確認するチェック項目があります。雑誌などを読んでも、妊婦さんの運動を否定するようなことばかりが書いてあって、メリットが全然知られていない。世界と日本の違いに違和感を覚えました。

人は全員身体が違うので、もちろん運動をするべきではない妊婦さんもいます。お母さんと子ども、二人分の健康状態をチェックした上で、二人とも問題なければ運動することはできるし、した方が良いのですが、極力リスクを避けるためには「常に安静にして」というのが無難であり、広まっているのかなと思っています。私のように運動の良さを発信する人が一人でも増えていけば、少しずつ変わっていくのではないでしょうか。

―実際、妊婦さんが運動することで、身体にどのようなメリットがあるのでしょうか?

まず、出産の時のことをお話しすると、私は陣痛の時間はとても長くて大変だったのですが、分娩の際は筋力があったので、すぐに産むことができました。妊婦さんがまったく運動をしていないと、赤ちゃんを産む前に体力を使い果たしてしまう、分娩に必要な筋力がない、という事態が起こります。また、出産から半年ほど経ちますが、骨盤にゆがみが出てしまうなどの症状もなく、身体に不調がありません。これは、運動を続けて筋力を維持してきたことが関係しています。また、お母さんは生まれてすぐに数キロある赤ちゃんを頻繁に持ち上げるので、腰を痛めてしまう方も多くいます。これも運動を継続して一定の筋力があれば、緩和することができるのです。

―妊娠中の運動を推奨する一方で、産後しばらくはまったくトレーニングをされなかったと聞いています。なぜでしょうか?

出産と身体のことを勉強するまでは、子どもを産んだらすぐにがんがんトレーニングを開始して、身体を仕上げるのが理想の姿でした。しかし、産婦人科医の先生に正しい知識を教えていただいたり、自分で調べたりしていく中で、産後すぐに運動することは健康上大きなリスクがあることが分かりました。腹筋に力を入れるだけでも良くありません。自分のポリシーとして、トレーニングは健康を害してまですることではありません。また、私のソーシャルメディアをフォローしてくれている方たちなど、産後すぐに身体を戻したい、引き締めたいと考えている人が周りにたくさんいたので、私がそれをやってしまったらそういう習慣を助長してしまうと思いました。

画像6

お母さんが運動することで生まれる、幸せの連鎖

―ここまでは、運動が身体に与える影響についてお話を聞いてきました。メンタル面についてはどのようなメリットがあるのでしょうか?

以前、運動しているところをソーシャルメディアにアップしたら、「今はできるだけ赤ちゃんと一緒にすごして」といったコメントがありました。直接言われることもたまにあります。
日本では、お母さんは赤ちゃんとずっと一緒にいないといけない、という強いプレッシャーを感じます。しかし、どんなにかわいい我が子でも、24時間365日一緒にいると追い詰められてしまうこともあります。そして、そのお母さんのストレスやいらつきは、赤ちゃんに伝わるのです。

1週間の中で、ほんの少しの時間でもいいので運動する時間をつくれば、心が明るくなります。スポーツウェアに着替えて、10分くらいヨガをやったり、身体を思いきり伸ばしたりするだけでもいいです。私の場合は、トレーニングをすると新しい自分に会う感覚になります。起きてから窓を開けて朝日を浴びる瞬間のような、なんだかはつらつとした気分です。そして、子どものことが恋しくなって、また会いたいという新鮮な気持ちを思い出すことができるのです。

―子育てをしていると、忙しくて運動するのが難しいと思うのですが、どのように時間を確保しているのですか?

子育てをするまでは、ちょっとくらい時間はあるだろうと思っていたのですが、本当に忙しいです。私の場合は共働きなので、夫とお互いのスケジュールを確認しつつ、どう役割分担するとバランスがいいか、常に話し合ってやっています。夫も運動をする人なので、運動ができないとどういう気持ちになるのかお互いによく理解していて、話をしっかり聞いてくれますし、協力もしてくれます。ポイントは、お母さんが運動をしてポジティブになることで、パートナーや子どもも含めて、家族全体によい影響があるということです。お母さんのためにというよりは、家族が幸せに過ごすために、生活の中にスポーツがあるということが大事だと思います。

画像4

私たちはもっと自由になれる

―女性がキャリアを形成していく上で、妊娠や出産が障害になると考えている人もまだまだ多くいると思います。現状をどう考えていますか?

ある知人が、「結婚して出産したいし、その後も仕事を続けたい。だけど、女だから無理だと思う」と話していたのを聞いて、とても悲しい気持ちになりました。私自身、仕事が大好きでこれからもずっとやっていくつもりなので、こういうことを思う女性が少しでも減ってほしいと思っています。妊娠、出産はまったくネガティブなことじゃありません。それを経験しながらキャリアも築き上げる女性が一人でも増えていけば、イメージは変わると思います。

最近、私が考えているのは、仕事、子ども、家庭、というように切り分けるのではなく、それらが一つの和となって一体化すればいいなということです。例えば、お母さんが会社に子どもを連れて行ったり、ミーティングに参加したり、それが普通であるという態度を取っていきたいです。子どもにとっても、お母さんが働いているのを見るのはいい経験になると思います。組織の中で社員と家庭が一体化する、もっと広げて、社会の中で一体化する。そんな世の中にしていければいいなと思います。

―今の目標、何か目指していることなどはありますか?

一番の目標は、女性が集まれる場所、コミュニティのようなものを作ることです。妊娠や出産のタイミングなど、友だちと疎遠になってしまうなど、女性が孤独になることがあると思います。そういう人がコミュニティに入って、仲間と一緒に身体を動かすことによって、より良い人生を体感できるようになればと考えています。

―最後に、ジャスティーンさんにとってトレーニングとは何か、あらためて教えてください。

私の人生をより良くしてくれるものです。マインドも身体も、トレーニングが私の人生を変えてくれました。生活の中に運動を取り入れることで、誰でもポジティブになれると思っています。運動をしてさわやかな気分になって、昨日よりも良くなったと感じる瞬間って、無敵になった感覚。運動はどんな人でも、いつでも、どこでも始められるので、幸せに生きるためにぜひ生活の中に取り入れてみてほしいです。

画像5

UNDER ARMOUR WOMEN’S「 私たちらしく、前へ」
特設サイト

ブランドムービー
「THE ONLY WAY IS THROUGH. 私たちらしく、前へ」