見出し画像

室戸岬

大学のサークル旅行で、室戸岬に来た。
室戸岬は、四国の南東にある岬(四国の下にある2つの出っ張りのうち、右の方)だ。
室戸には岩が沢山ある。地球の力によって、海底にあったはずの岩が、プレートに押し付けられて90度回転した状態で現れている。
風が強い。波も荒々しい。
気づけば、岩場に座って自分の人生を見つめていた。理屈じゃなくて、本能であろう。

サークルの他のメンバーがどこに行ったのか、少し気になった。探してみたところ、少し離れた岩場の先端にみんなで集まっていたみたいだ。自分もそこへ行ってみようと思った。

眼前の岩場には、登れないほどの断崖があった。横の通れそうな路から少しずつ登ろうと、断崖の右に進み登っていったが、その先には深い入江があり、自分にはとても超えられそうではなかった。道を間違えたようだった。仕方がないから、もとの場所へ戻り、断崖の左から登っていった。

途中で先輩とすれ違った。先輩は、自分に荷物を置いていくことを勧めたが、なんだか荷物をその場に置いておくのは違う気がした。少し水辺が近く、濡れてしまいそうだからだけでなく、まだ荷物を持っていきたいと何故か感じたから、自分は荷物を背負ったまま進んだ。

少しずつ、足場が不安定になった。今足を乗せている場所では心許無くて、何箇所か足の置き場を探した。それでも不安定で、安定した場所までなんとか向かい、一休みした。荷物が重く感じられて、結局その近くで荷物を置くことにした。カメラやバッテリーの入った手提げだけを持って、更に進んだ。荷物は、ベンチマークとして活用することにした。

なんとかたどり着いたその突端は、断崖の割に足を置ける安定したスペースは少し狭かった。風が強く、体から熱を奪っていった。スマホを出すと落としてしまう気がして、カメラだけで写真を撮った。


帰りにも、道を間違えた。人がいないので、どこが正しいのかわからなかった。何もかもが、間違っている気さえした。ベンチマークだったはずの荷物が、やけに重く感じられた。
戻ったときには、すぐバスの時間が迫っていた。急いでバス停に向かったが、なんだか惜しい気がした。

室戸岬は、人生みたいな場所だ。
自分がどんなに強固な岩盤でも、強大な力には抗えず屈してしまう。見通しの効かない道のりを何度も越えようとしては、進むことが出来ず引き返す。自分の道のりが誤りであったかもしれないと、自分自身と向き合いながら、他の道を模索する。どこにもガイドもルートマップもなく、ただ自分で最善の手を考える。重たい、手放せない枷や手放したくないものとともに、路を探し続けて切り開いていく。越えられないものは越えられないし、進めないところは進めない。届かないものも、叶わないこともある。一休みできる、自分を落ち着かせられる、安定した場所は狭く少ない。強風と大荒れの海が自分を冷やしていく。
その舞台で自分が自分を見つめ直そうとしたくなったのも、ある意味必然かもしれない。

室戸岬に身を置き、自分自身ともっと話したくなった私は、他のメンバーに一言告げたあと、ひとり岬へ留まった。この体験を、すぐ文字にしないと行けない気がして。


※加筆、修正する場合があります

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?