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春は最高

頼むから高校は卒業してくれ。
と、両親に言われた。

授業なんて全く頭に入っていなかった。
いつも窓から外を見ていた。
高校生活は灰色だった。


卒業式が終わって。
みんなが打ち上げだなんだ言っている中。
私はまっすぐ帰る。
少し小走りになる。走る。

誰かに何か言われたような気もするが。
どーでもいい。

電車に間に合う。
他の生徒は誰も乗っていない電車。
真昼間。お客さんもほとんどいない。
そこで実感が込み上げてくる。

ああ、終わった。
耐えた。やった。
もう一生会わなくていい。誰とも。

春の電車は田舎道を走る。
暖かく晴れた日だった。

あの時の開放感といったらなかった。
何でもできる感覚だった。


その後。
専門学校に入るが。
どうにもならず。
しばらく就職もせず。
バイトばかりして。
実家に帰ってきて。
就職したが辞めちゃって。
引きこもっちゃって。
またバイトしてる。

何やってんだ俺は。
何もすごくなってないし。
誰も見返せていない。
ただ年だけを取っていく。
現実に打ちのめされていく。


もう一度、生きてみたい。
18歳のあの気持ち。

大丈夫。
春は最高だし。
もう高校に行かなくていい。

まだ、俺は生きている。
新しくやり直せる。考えろ。





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