冷蔵庫の中の空き缶。
中身が空っぽのビールの缶が、冷蔵庫に入っている。
中身がないのは昨日わたしが飲んだからで、なんでそんなものが冷蔵庫に入っているかと言えば、昨日わたしが入れたからだ。
頭がおかしくなったわけでも、ライフハックなわけでもない。
ただ、入れてみようと思いついたので、入れてみたのです。空き缶を。
ところで、誰しも猫をかぶって生きているじゃないですか。
みんないろんな猫をかぶっているし、大体は脱いだり着たりが可能だと思うんだけど、いつしかどうしても脱ぎ着が難しくなってくるものが、ひとつだけある。一匹だけいる。「大人猫」です。
本当に誰がみても「大人」という年齢とか責任を負うとなると、脱ごうとしても「いや、いい大人がなに脱ごうとしてんの」と上空から眺める自分が冷ややかに呟いたりするので「あ、ですよね」と、正座し直したり。
「タナベさん、毛並み整ってますね」とか言われると(そう見えるのか…)と思いながら背筋正してたり。猫の癖に。
そう、大人の背筋は伸びているもの。
冷蔵庫の中には、冷えた卵と冷えた豆腐と冷えたチーズと冷えたジャムと冷えたビールが入っているもの。
ああ、うん。まあ、そう。でも、え?
わたしは別に、そこに冷えたiphoneが入ってたっていい。
冷えたリモコンが入ってたって、冷えたドライヤーが入ってたって、冷えた観葉植物…は死ぬからだめだけど。
なんなら明日、冷蔵庫自体、捨ててしまってもいい。
そう思ったらなんだかすごくいい気分になったので、空き缶をいれてみた次第です。(そこで本当にリモコンとか入れてしまうと、それはそれで何故かなにがしかのあざとさを感じる絵的に)
で、朝起きて、水を取り出そうとして、冷蔵庫の真ん中に直立している空き缶が目に入るわけですが、なんかすがすがしかった。
ので、まだ空き缶入ってます。かしこ。
おかしかっていいですか。ありがとうございます。