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実家がなくなった日のはなし。

みなさん、ご実家ありますか?

わたしはそもそも田舎というものがありませんでした。
いや。厳密にお伝えすると多分ある。母の実家が茨城県だったので、
きっとそこが田舎でしょう。しかし、わたしの理想の田舎というものはありませんでした。わたしが中学生のころ、母の母、わたしのおばあちゃんが亡くなったため、それ以来お墓参りでは茨城に行くけれど、それ以外で行くことはなくなりました。
同級生の夏休み恒例「田舎に行って〜」「おばあちゃんとおじいちゃんにおこづかいもらった〜」は耳に入ることさせ面倒でした。

ちなみに両親がいたので、もうひとつ田舎があるとお思いかもしれませんが、
父方の母は一緒に住んでいたので、田舎はありません。なんなら夏休み恒例お小遣いや、お正月恒例お年玉なんてものもありませんでした。

さて。そんなわけで、わたしの考えでは子どもたちに田舎ではなくとも、
ママの実家ですよ的な場所はほしかったわけです。
ちなみに元だんなさんの実家は大層ご立派な田舎でした。
本家やら分家なんて初めて聞いたわってくらい大きな家。なんかテレビでよく見るようなでっかい立派な、格式ある的な家でした。

でも、離婚しちゃったからそこへ子どもたちを連れていくわけにはいかないしね。

なので、よけいに実家は大切にしたかったわけなのです。


わたしが離婚をすることになり、というか勝手に決断をし家を飛び出し、
実家へと身を寄せていたある日のこと。
ひっさしぶりに父帰宅。何ヶ月ぶりだろか。

「話があるんだ」

という神妙なおももちで、母とわたし、ちょうど実家に帰ってきていた妹に話しかけてきました。

「実は。。。」

と切り出す父。また金の話かと9割がた思っているわたしたち。

「実家を売ることにした。」

ん?なんて?

「お父さん、借金がたくさんあってな。もう耐えられないんだ。」

いや、まて、耐えろよそこは。てかよくお父さんって自分で言えたもんだ。

「だからこの家を売ることにした。できるだけ早く買い取ってもらうつもりだから、次に住む家をあと2週間くらいで決めてくれ。」

いやいや、家ってそんなに早くみつけられるっけ?
そもそもなんで2週間しかないんだよ。

父はため息をついたあと、

「ごめん」

と言った。ような気がする。多分。

言いたいことはたくさんあって。
そもそもこのおうちのローンを返済したのは母でした。
一生懸命パートをしてやりくりして返済をしていたし、
なんならちょっと前に

「やっと家のローンが終わったから、ここにしばらく住んでればいいよ。」

と、離婚してでてきたわたしたちに言ってくれていた。

それを何勝手に売ってんのさ?
いや、絶対反省してないじゃん?そもそも絶対悪いと思ってないじゃん?

そんなことを思いながら、まず最初に母の顔を見てみた。

「あっそ。」

あっそ?強い。強すぎるよあんた。
もっとなんか言うことあるでしょうに。何か言ってやんなさいよ。
見てよ、妹なんてすでにフィアティングポーズとってますよ?

母がこれ以上何も言わなかったので、わたしたちの実家はあっという間に
売られることになりました。

この日の夜、不思議なことに父の悪口など言うことはありませんでした。
普通なら、ひどい!あんまりだわ!とか言いそうなものだけど
誰の口からもそんな言葉はでてこなかった。

きっと父をすでにみんなあきらめていたのかもしれないなと思う。
いつかはこんなことを言う日がくるんじゃないかって思っていたのかも。

よかったな。父よ。
わたしたちがすでにあなたのことをあきらめていて。
そうじゃなきゃきっとさ、わたしたちにボコボコにされてたよ、きっとね。

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