小さい春

「お姉ちゃんお姉ちゃん!」

 葵が手のひらを合わせて器のようにしている。その中には何も入っていない。

「なんや?」

 茜は首をかしげる。

「小さい春だよ!」

「何処にあるんや?」

「花粉……」

 葵はボソッと恐ろしいことを言う。

「やめいやめい!」

 茜は両手をバタバタさせて葵と距離を取った。

 葵の笑顔に悪魔が見えた。


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