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大学授業一歩前(第134講)

はじめに

 今回は書籍編集者の竹田純様に記事を寄稿して頂きました。お忙しい中作成して頂きありがとうございました。是非、今回もご一読くださいませ。

プロフィール

Q:ご自身のプロフィールを教えてください。

A:書籍編集者。1987年、山形県生まれ。大阪外国語大学(現在は大阪大学外国語学部)で、ペルシャ語を専攻しました。卒業論文は「イスラム圏における製紙技術の伝播とその影響」。読売新聞大阪本社、イオンエンターテイメント、三才ブックス、柏書房、日経BPを経て、22年4月から晶文社。編集してきた本のジャンルは、ノンフィクション、エッセイ、人文書が中心です。こんな本を作ってきました。

オススメの過ごし方

Q:大学生のオススメの過ごし方を教えてください。

A:まずは心身の健康が第一。あとは、各々興味が向くことを、じっくりコツコツやるのがおすすめです。飽きたら中断して、またやりたくなったら再開する、でいいと思います。
 自分の場合は「一人で旅行」「空きコマに大学の図書館で映画を見る」「別の大学の人、学生ではない人と創作活動をする」「語学を本気で勉強する」あたりをやっていました。唯一後悔しているのは、大学の先生ともっと話しておけばよかった、ということです。

必須の能力

Q:大学生に必須の能力を教えてください。

A:調べる力。大学も企業でも、問いを立てることが求められるかと思います。そのためには、先人たちの著作や社会状況をリサーチしておくことが重要です。大学の先生方が何から始めればいいか教えてくれるはずです。私は岩波ジュニア新書やちくまプリマ―新書から読むことが多いです。
 あとは、「論破」ではなく、相手の意見がより通じやすくなるための建設的なコメントを組み立てる力をゼミなどで鍛えられたらなおいいと思います。

オススメの一冊

Q:今だから大学生に読んでいてほしい1冊を教えてください。

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A:和田靜香、小川淳也(協力)『時給はいつも最低賃金、これって私のせいですか? 国会議員に聞いてみた。』(左右社)。
 最低賃金で働いてきた著者が、タイトル通りの問いを現役の国会議員にぶつけてみる実録ノンフィクション……というだけではない。「何がわからないかも分からない」状態からスタートした著者が、経済・福祉・その他もろもろを猛烈に学び、最後には議員と対等に議論するまでに成長する。最初と最後でもう別人。学びの可能性を示してくれます。

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 遥洋子『東大で上野千鶴子にケンカを学ぶ』(ちくま文庫)も似たコンセプトの本でこちらもオススメです。

学ぶ意義

Q:先生にとっての学ぶことの意義を教えてください。

A:自分には難しい質問なのですが、ひとつは「自由になれる」ことがあるのかなと思います。物事の構造や仕組み、経緯などがわかってくると、当然のことと思い込んでいたことが当然のことではないとわかってくる。すると、いろんなことができる気がしてくる。
 あるいは、理不尽に感じること、納得できないことがあったとして、学びを通じて場合によっては、どうすれば解決できるかも見えてくる。学びには、そういう効用があるような気がします。

メッセージ

Q:最後に大学生に向けてのメッセージをお願いします。

A:私が大学生のときには今のような未来が来るとは思っていませんでした。仕事でも仕事以外でも、現実の厳しさに途方に暮れることもしばしばです。ただ、そういうときこそ力を発揮するのは、先人が積み上げてきた知恵の体系、あるいは専門家(いわゆる学者とは限りませんが)の存在だなあと日々実感もしています。大学時代は短いですが、そういう一生ものの財産にアクセスする方法だけでも、ぜひ体得してもらえれば、それだけで大成功ではないかなと思います。

おわりに

 今回は書籍編集者の竹田純様に記事を寄稿して頂きました。お忙しい中作成して頂きありがとうございました。ご紹介していただいた一冊『時給はいつも最低賃金、これって私のせいですか? 国会議員に聞いてみた。』はまだ読んだことが無く、今度読んでみようと思います。左右社様のnoteで立ち読みも出来るので合わせてご一読下さいませ。

 今回の竹田様も草思社様と同じく、神保町の書店PASSAGEでお会いをし、寄稿の依頼をしたところ快くお受けいただきました。本と人の距離が少し遠くなってしまう中、それでも本を編む方々の熱い想いを聞くことができ私も大変勉強になっております。今回はありがとうございました。次回もお楽しみに。



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