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大学授業一歩前(第131講)

はじめに

 今回は草思社様に記事を作成して頂きました。お忙しい中、作成して頂きありがとうございました。是非、今回もご一読くださいませ。

概要

Q:自社の概要を教えて頂きたいです。

A:草思社は1968年にできた会社で、10年ほど前に文庫のレーベルを始めるまでは単行本だけでやっている出版社でした。おおまかな括りとしてはノンフィクション主体の出版社ということになっていますが、出している本のジャンルは歴史、サイエンス、心理、時事モノ、スポーツ、エッセイ・評論……と多岐にわたっています。
 また翻訳本もかなり出していますので、ちょっと捉えどころのない出版社に見えるかもしれません。
 広く読まれている本としては『銃・病原菌・鉄』『マインドセット』『東大教授が教える独学勉強法』『生き物の死にざま』などがあります。ジャンルを問わず、「この視点はこれまでなかった!」という本を出していこうというのが、共有されている価値観です。

本を読む面白さ

 Q:編集者の視点から本を読む面白さを教えて下さい。

A:1冊の本が世に出るまでには、さまざまなプロセスがあります。  書き手や編集者の側に「この考え方を(この事実を)ぜひ世に中の人に知ってほしい」という思いがなくては始まりませんし、そこから先には「1冊の本として成立する内容なのか」「読者に刺さるコンテンツなのか」「似た本は出ていないか」「商売になるのか」……と、いろいろ関門があります。
 本として世に出ているということは、そういうハードルを(一応は)越えてきているはずですので、作り手の側が何に価値を見出し、どう勝算を見出してその本を出しているのかを、ちょっとメタな視点で考えてみると、本というメディアをより深く味わえるかもしれません。

他の出版社様でのオススメの一冊

Q:一年生、二年生向けにオススメの一冊を他の出版社様の本のなかから一冊ご紹介お願いします。

A:『弱いつながり:検索ワードを探す旅』東浩紀(幻冬舎文庫)。
 当代きっての思想家である東浩紀さんが、この難しい時代を「より良く、よりまっとうに生きる」ための知恵をとても平易に提示してくれている本です。
 ものすごく単純化していうと、旅という不確実性に身をさらすことで自分の「検索ワード」の幅をできるだけ広げよう、ということが書いてある本です。
 といってもインドを放浪するようなガチな旅人になれと言っているわけではありません。自分が所属しているコミュニティからちょっと離れて、「無責任な観光客」になることをこの本では勧めています。そうすることで新たな検索ワードに出会えますし、そこから新しい視点や発想が生まれてきて、深みのある思考力や世界観が身につくのでは……、ということです(その実例は、本書をぜひお読みください)。  
 何かを調べたり考えたりするための根っこになる本だと思います。

草思社様のオススメの一冊

Q:学部一年生、二年生向けにオススメの一冊を草思社様の中から一冊教えて下さい。

A:『旅の効用:人はなぜ移動するのか』ペール・アンデション/畔上司訳(草思社)。
 また旅の本で恐縮です。おカネも時間も労力もかかるうえに時に危険でもあるのに、なぜ旅に出る必要があるのかということを、この本ではあれこれ考察しています。たとえば「旅とは、未知の音、噂、慣習と相対することだ。当初は不安になり心が混乱したとしても何とかなるものだ。旅に出れば、一つの問題にも解決法が何種類かあることを知って心が落ち着くようになる」といったことが書いてあります。
 「唯一の正解」を探そうと前のめりになりがちな現代人の視野を広げてくれるのが旅ということでしょうか。ネットで世界中の情報にアクセスできる時代になぜフィジカルな経験が大事なのかを、味わい深い文章で伝えてくれる本です。

メッセージ

Q:最後に大学生へメッセージをお願いします。

A:最後にやはり「本をたくさん読んでください」とお願いしたいです。
 いまはこのnoteやYouTubeなどでも面白くて有益な情報がたくさん手に入るわけですが、知の領域を面で抑えていくには、本という形式はいまだに優れたパッケージじゃないかなと思います。最初から最後まで内容をパーフェクトに理解しなくては……と気負わずに(とりわけ「名著」と呼ばれる本にこの姿勢で臨むと挫折しがちです)、気軽にどんどんいろいろな本を手にしていただけたら、と思います。

おわりに

 今回は草思社様に記事を寄稿していただきました。お忙しい中ありがとうございました。
 神保町の書店PASSAGEでお会いをし、突然の依頼にもかかわらず寄稿をご承諾していただけました。

 いまはこのnoteやYouTubeなどでも面白くて有益な情報がたくさん手に入るわけですが、知の領域を面で抑えていくには、本という形式はいまだに優れたパッケージじゃないかなと思います。

 あくまで、「大学授業一歩前」は本そして大きな知への一歩前です。是非、本の森へ!!次回もお楽しみに。

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