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読むこと、書くこと。【日々のメモ 2024】

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その日ふと思ったことや好きなもの。 読んだ本の数行などを写す「メモ帳」として。 いつも持ち歩いているノートのかわりに。 ひとつの微風くらいの気軽さで記録。
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記事一覧

 距離という涼しい波間(鏑木清方「胡瓜」)

 五月。若草、萌黄、柳色……と、まだ吐息のように薄い新緑の色の重なりを見あげたくて、駅か…

あなたという月の光のために(吉田健一「大阪の夜」)

 細かく区切られた時間の抽斗に「やるべきこと」のひとまずの完成形を入れておく。次から次へ…

ひとり旅にはない地図(新しい詩誌のこと)

 以前、このnoteにも書いた。今年は個人誌を作ろうかな、と。  この2年くらいの間に書いた詩…

わたしの投稿時代のこと

 2023年6月号から始まった「現代詩手帖」の選考委員の仕事も無事に終わり、いま、最後の対談…

本とコーヒーと惑星と

 今月頭の、とても楽しかった神戸の講演がなんだか遠いことのようだ。  金木犀の香りにつつ…

ともし火と鏡からこぼれるもの

 詩をどう読み、書くかは人それぞれ。  詩集をほとんど読まなくても、詩人や過去の作品をあ…

姿を消した本のこと(斎藤史の一首とともに)

 数年前、詩集以外の本を一緒に作りましょう、と提案してくれた人がいた。  何かの企画を一緒に、とお声がけいただくことはあっても、そのすべてが実現するとは限らない。依頼する方とされる方の都合が合わなかったり、進めるうちに考えの方向が分かれてしまうこともあるから。    あのときも数か月、いや一年以上は、原稿のやりとりをしていたと思う。  打ち合わせのあとに原稿を送り、それについて意見をもらい、書き直し、社内での検討の結果、また企画の始まりへと戻り、新しい原稿を書き、ふたたび修正

ひとりのときに香る霧(森茉莉と香水と)

 このところ眠りにつくまえに、最近書いた一篇の詩のなかの、漢字とひらがなを取りかえたり、…

車中の曲と「青いかげ」(蔵原伸二郎「めぎつね」)

 今日はいつもの朝と違って、東京の西の方へと流れてゆく、少し空いた電車に乗った。車窓から…

わたしはわたしの言葉だけに属している(ジュンパ・ラヒリ『べつの言葉で』)

 平日に休みをとって映画館へ。監督の31年ぶりの長編新作ということで上映前からだいぶ話題に…

『世界の詩論』からのメモ。連休の終わりに…

 この連休は、机のまえに座れるときは、いくつかの準備のために詩集や詩を読んでいた。  人…

「人の世」にいつか戻るまで(伊藤悠子「この木を過ぎて」)

 最近、さびしい、という言葉を、数人の友人から続けて聞いた。それぞれに、親しい人と別れた…

一通の白い羽根(宇佐見英治「恋文」)

 雪の日のあと、溶け残る白を思わせる詩誌が届いた。表紙にも本文にも、軽い白地の同じ紙を用…

雪、詩、白の譜(糸井茂莉『ノート/夜、波のように』)

 今日は夕方から雪が積もりはじめた。家に着くまでに通りの往来も少なくなり、いまいる部屋から耳を澄ましても、車の音はもう聞こえない。  耳を澄ましても静か、という時間がいちばん落ち着く。  気持ちが静まるときにだけ波が引いてゆく、わたしの一部であるはずのひと気のない明るい浜辺がどこか遠くにあり、砂の奥にふだん隠れていたものが、波が引いたおかげでやっと見えてくる。  それはたぶん甘く曇ったシーグラスか、割れずに残っていた小さい貝殻か。それは自分が埋めたものでもあり、もう地図には