見出し画像

髪を切らなかった話

僕は髪をあんまり切らなかった。
今となっては、3週間か4週間に一回必ず髪を切りに行くぐらいのナイスヘアボーイの中年男性なのですが、30代半ばくらいまで半年に一回くらいしか髪を切らなかった。

なぜ人は毎月毎月、数千円も出して髪を切るのか?
今日は自分の経験をもとに、その謎に迫ってみたいと思います。

中学生の時は校則が厳しかったので、髪を毎月切るわけです。しかし、高校に入ったくらいからかな。髪を切らなくなったのは。
僕が通っていた高校はかなり自由な校風だった。学生服はあったけど、服装が自由だった。なので頭髪もかなり自由で、金髪以外は特に注意されもしなかった(余談だけど、当時はまだヘアカラーみたいのはあんまり普及してなくて、ブリーチしかなかった)

そのころはいわゆるロン毛ブームで、芸能人も長髪が多かった。
木村拓哉も、江口洋介も、長瀬智也も、三上博史も、石橋貴明も、ふかわりょうも、スラムダンクの三井寿(初期)もみんなロン毛だった。そんな時代だった。

画像1

出典:SLAM DUNK より

そんな時代に多感な高校生だった僕ですから、当然髪を伸ばします。

しかし僕は天使の輪ができるレベルのキューティクルな直毛人間。友人からは座敷女みたいだねと当時からかわれたりしました。

画像2

出典: 座敷女 より

だが切らない。伸ばす。

ニット帽を深めに被ったりするのが流行った時代でしたし、それで襟足がパーマかけたみたくクリンってなって、「ちょっといいんじゃないか」って思ったりしてた。

長髪は良い。何しろコストが安い。髪を切ると一回数千円します。数千円って意外と高くないですか?
当時の僕はCDとかレコードを買うのが大好きで、毎月1万くらいは買っていました。髪を切らないだけで1枚〜3枚は買えるレコードが増えるわけです。これは嬉しい。髪なんて伸ばしっぱなしで良い。だってロン毛が流行ってるんだから。

幸運なことに浪人せずに大学に入学。そして一人ぐらしの大学生に数千円はきつい。物欲が爆発しているにもかかわらず、お金もあんまりない。髪を切るインセンティブが少ないんすよ。大学生には。

しかしそろそろ潮目が変わってきました。ロン毛ブームが終わるのです。恐ろしい。そこで、バリカンを購入しました。なんと、1回分の散髪代金で、無限に髪が切れるっ!

画像3

出典:SLAM DUNK より

とか言ってる間に社会人になります。
僕はWebエンジニアとして働いていたので、服装など見た目に関してさほど文句も言われません。多少お金も入ってきて、なんだか色気も出てきますが、それまで髪を切る習慣がない。そうすると面倒くさいので、なるべく髪を切らないでかつ、なんだかカッコいい髪型にしてみたいと思って、パーマをかけるようになりました。

パーマはすごく便利。一回かけると半年くらい放置してたんですが、なんとなくお洒落になったような気分になります。
そう、みんなとはちょっと違う、そんな特別な自分を演出してくれる魔法。
それがパーマネント。

でもですね、前述しましたように、ワタクシの髪、すごい直毛でパーマのかかりが地獄のように悪い。
一回のパーマのために3時間くらいかけないと、3日後には元の直毛に。
お金もいっぱいかかりますし、お金をかけて、頭皮を痛めるなんて!なんてこった。

そして最後のとどめは同僚の言葉。
「上杉さん(僕)は天然パーマの人だと思っていました」

よしパーマはやめよう。
消去法で、普通に毎月数千円払いつつ髪を切るのは、時間的にもお金的にもコスパがいい。

僕の父は、物書きになりたかったようだが、いわゆるサラリーマンをやりながら僕を育ててくれた。

「親父のようなサラリーマンにはならないよ」

みたいな感傷的な青春物語は一切なかったno反抗期な僕ですが、それでもいわゆる「普通」みたいな価値観に逆走していた自分探しの旅の果てには、実直に髪を切り続け、ど真ん中を歩むことが経済的効率として良いことに気づき、父のような人間になっていくのです。

これは社会というシステムの呪いか、福音か。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?