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【技術深堀】無人店舗決済事情~なぜSuiCaは台頭しない?その構造的問題

今色々な方式の無人店舗が出てきており、デモ展示から実証実験や商用に向けた動きを加速しています。その中で使われる決済方式は基本的にQRコードや顔認証などこれまで主流だった決済手法を使わない方法がほとんどですが、日本、主に首都圏では主要サービスとなっているSuiCa系サービス(SUGOKAとかHAYAKAとかありますがここではSuiCaに統一)の名前を聞くことはJR東日本スタートアップ以外ではありませんよね。

そこで、SuiCaの強みと、それがなぜ無人店舗では候補にあがらないのかを書いてみようと思います。

■SuiCaの強みの内訳~一瞬で終わる決済処理構造

SuiCaに代表されるFeliCa決済は決済音と共に瞬間的に終わるのがメリット。この快適さにSuiCaが手放せない人も多いと思いますが、裏を返すとこの「一瞬で終わる」処理を実現するための構造が結果的に無人店舗では使いにくいものになっています。

SuiCaが一瞬で決済処理を行えるのはその構造に起因します。SuiCaの決済処理はリッチクライアント方式を採用しており、決済段階ではすべての処理を端末内で終了させます。Billingについては処理後にサーバーに送付することで、クライアント⇔サーバ間の通信ラグ発生を防いだりや通信断による決済不可を回避しているのです。

じゃあ使えなくなった(盗難等によりブロックされた)カードはどうしているかというと、夜間にブラックリストを受信して内部に貯め込んでいます(この通信が通信料のほとんどを占める)。つまり、ブラックリスト以外のカードからの処理をクライアント内に貯め込み、それを後で決済サーバに送るという構造により最速と言われる処理速度を出しているんですね。

■リッチクライアント型だからこその難しさ~与信処理

リッチクライアント型を採用することで処理速度は劇的に上がったのですが、保持金額の根拠がカード内の金額を第一とする構造にする必要があったためサーバ側で金額をコントロールすることができず、結果「与信」機能を捨てざるを得なくなりました。

この与信機能というのはあらかじめ決まった金額枠をシステム側で保持し、決済金額が確定した時点で差引額を出して確定させる(与信確定)させるものです。欧米のクレジットカード処理だと普通にある処理なのですが(日本ではできません)、無人店舗では入店時にこの与信(相当)の機能により入店許可をし、最終的に退出時に確定させるということを行う必要があるため、この与信機能がないと赤羽の実証実験のように二度手間になってしまうことが避けられず、あまり好まれません。

キオスククラスの2~3名程度が入店上限の小型店であれば多少の不便で済みますが、特にオフィスなどに増え始めた無人販売ショーケース(無人販売機)だと扉を開けるタイミングで与信処理を行わないと動作しない(正確に言うと捨てカードで万引きができてしまう)ため、採用できないのが実情です。

■最後に~より柔軟な決済処理への対応を希望

SuiCaだとオートチャージ機能があり不足分をその場で書き込む方法があります。この機能を延長し、カード接触後に不足した残金をサーバ側でオートチャージ、次のタイミングでカードに反映させることができればこうした問題はクリアできます。こうすれば今の処理形式を大きく変更することなく柔軟な決済処理への対応も可能となるため、是非考えてほしいと思います。

首都圏ではSuiCaがデファクトスタンダードになっており、小売店でも使える場所は多くなっていますので、こうした流れの一環として機能拡張があると嬉しいですね。

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