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【映画感想文】枯れ葉:アキ・カウリスマキ

フィンランドといえば森と湖とムーミンの国、福祉が充実していて誰もが幸せに暮らしているというイメージだが、それはかの国の一面に過ぎないようだ。

主人公はホラッパとアンサという中年の男女。ホラッパは心優しいがアルコール依存症で仕事が長続きしない。アンサも家族に恵まれず、理不尽な理由で解雇され、きつい仕事をしている。そんな、分かりやすい「幸せ」とは程遠い生活を送る二人が出会い心を通わせていく。

アンサの毎日はトラブル続きだ。それにラジオから流れるウクライナ戦争のニュースが追い打ちをかける。この戦争はフィンランドの人々にとって私たちの想像以上にストレスを感じさせていることだろう。それでも彼女はラジオを切り、少し考え、仕事に行く。買い物をし食事をする。アンサの強固な日常がやがて、打ちのめされた一人の男(と一匹の犬)に希望と勇気を与えることになる。命が「数字」として処理されていく世界で淡々と続くアンサの生活は、ひときわ尊く思える。

彼女は無愛想でほぼ感情を表さない。だからこそ時折見せる彼女の笑顔には底知れない説得力がある。怒鳴ったり叫んだりしないからこそ伝わる気持ちがあることに改めて気付かされる。

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