【ゲーム攻略&創作日記】ソーサレス*アライヴ!〜the World’s End Fallen Star〜感想_非実在女子大生、空清水紗織の美少女ゲーム攻略&創作日記Vol.0002

主人公の折見公輝はゲーマーの高校生。放課後に親友の篤志と帰る途中、学園のヒロインや義理の妹、今ではすっかり疎遠になってしまった幼馴染や、ほんわかした先生に声をかけられる。いつも通りの日常だ。その途中、教室にスマホを忘れたことに気付く。急いで教室に戻ると窓から光が差し込んできた。その光は公輝に近付き、そして飲み込んだ。
次に公輝が目を覚ました場所は、文明の基本が魔法で成り立っている世界だった……。

Fluorite、記念すべき一作目の作品だ。
この作品は萌えゲーアワード2019の金賞・ニューブランド賞を受賞している。かくいう私も、この受賞をきっかけに購入を決めた一人だ。普段から外に出ないヲタクとはいえ、このご時世で家にいる時間が更に増えたため、ゲームをオンラインでまとめ買いしており、その中の一作として購入したものだ。
(「萌えゲー」よりは「美少女ゲー」の方が呼称としては好きなので、私は後者の方を用いている。あと、この手のゲームの「殿方にとっての実用性」に関してのレビューはないのであしからず。物語に触れたくてゲームを購入しているので、感想もシナリオがメインになるだろう。)

プレイ開始から10分ほどは、買うゲームを間違えたかな?というくらいの、いかにもな学園モノ。これでもか、というくらいのお約束が詰め込まれた冒頭の後は、異世界に転生してヒロインを押し倒すお約束コンボが決まる。いっそ清々しいほどのテンプレストーリー。その後も各ヒロインたちとは、王道のストーリーが紡がれる。
だが、これはあえてそうしたのだろう。萌えゲーアワードの受賞コメントでは、プロデューサーのトクナガさんが以下のように述べている。

『ラノベではよく見かける異世界転生モノですが、美少女ゲームの媒体でどの様に表現すれば魅力的に見えるかにひたすらこだわった作品でした。』

例を挙げれば枚挙に暇がない異世界転生モノ、このジャンルで突き抜けようとすればそれなりの工夫が必要だろう。本作では、異世界転生モノと思わせて実は……という工夫が施されている。前半のSORCERESSではラノベで慣れ親しんだ展開が、そして後半ALIVEでは前半の伏線を回収しながらも前半とは異なる種類のストーリーが展開される。この構造の提示の仕方は物語の内容としても違和感なく、だからこそ冒頭、および前半の「いかにも感」が大事だったのだろう。「〇〇と思わせて、実は××だ!」とする際、あらかじめ〇〇であると読者に明示した方が、××だと種明かしした時のワクワク感が大きい。萌えゲーアワード選考の際も、この「いかにも感」は議論になったらしいことが講評から読み取れるが、私はこれぐらいでも良いかなと思う。

前半SORCERESSでは各ヒロインの悩みを解決しながら仲を深めていく。アキナは騎士隊長である母親、ユズリハは自身の種族、アズーリアは貴族としての結婚について立ち向かう。(ミアだけが少し弱かったかな……。主人公に自分のことだけを見てほしいと思う気持ちは可愛いのだが。)
この4人を攻略してはじめて、後半ALIVEが攻略可能となる。4人それぞれと過ごした日々の記憶が断片的にある状態で、ALIVEは始まる。特にユズリハのルートは後半と密接に関わってくるので、攻略するなら最後の方が記憶に残っていて良いかも。

ALIVEはいわゆるタイムリープ的な展開だ。アキナ&アズーリアのペアと行動した後、振り出しに戻ってユズリハ&ミアのペアと行動し、再度振り出しに戻って世界に抗っていく。
アキナ&アズーリアのペアと行動し始めたときは、残り2人が好きな人はどうすれば!?と少し焦った。闘技場からの脱出シーンでどちらのペアと行動を共にするか選択肢があれば親切だったなあと思うが、そうすると物語の緊迫感が薄れるので、なかなか難しいところ。
黒幕も少し考えれば「あの人か」と分かるが、それでも最後まで楽しく読ませるシナリオだった。

最後に、SORCERESS編の世界観(ジャムやポテチで問題解決できたり)や、一部ALIVE編の主人公の態度(今までの流れ覚えてたらそりゃないだろう)など、突っ込みどころがないわけではない。だが、レイヴでのチーム力を上げていったり、黒幕との決戦シーンだったりと、読んでいてアツくなるシナリオだったことは確かだ。演出も声優さんの演技もとても良かった。
ニューブランドということもある。2作目、3作目にも期待したい。

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