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episode7. 事故報告書の情報開示請求

(※ 学校名称や人物は仮名で、役職は当時のものです。)

延岡市教委より「A教頭の文書訓告」という連絡を受けてから「相手も認めていて概ね一致している」はずの「刑法にふれるようなこと」が単なる文書訓告なわけがないという思いが片時も頭から離れない。

どこまで教育委員会に真実が伝わっているのだろう。 教育委員会として本当に適正な判断・処分を行ったのか。まるで何事も無かったかのようにうやむやに処理されていったのではないか。事件の内容について相手がどこまでを認めて、認識がどこまで一致していたのかを知りたいと思った。

そこで代理人契約を結んだ松永弁護士と相談し、今回の事件に関する報告書を開示請求することにした。3月29日に受けたB補佐からの電話で「当事者であっても情報開示の請求は出せないという判断になるのではないか」と伝えられていたので、すべてを開示しないつもりでいることは覚悟していたが、これから先の教育委員会とのやり取りに社会のルール上の信頼を裏切られ続け、誠意のない対応に深く傷つけられていくことになった。

2017年5月30日付で開示請求を出し6月8日に延岡市教委のE管理係長から電話が入った。

学校教育課 E管理係長
5月30日に出されている情報公開の件なんですが、情報公開条例に基づいて海野さんが請求をされているんですが、延岡市の方にはもう一つ、個人情報保護条例というのがありまして、こちらに基づいた請求もできる形になっております。それで、この二つの違いは個人情報保護条例に基づいた情報開示の場合は請求者本人の情報が開示できるという違いがあるんですよ。情報公開条例に基づいた請求だと、極端な話、第三者、誰が請求しても同じ内容の開示文書になってしまうというところがありまして。
学校教育課の方でも、今、情報公開条例に基づいた手続きを進めているところですが、そこのご案内をしないと、海野さんの方に不利益と申しますか、開示内容が違うということになってしまいますので、どちらで請求されるかという事をちょっとご確認したいと思って電話をいたしました。


5月30日に私が提出した開示請求では意味をなさない、という事でお電話いただいたということですよね。

E管理係長
いや、もちろんこれに基づいた情報開示もできます。


当事者として知りたいので、私にとって、私の権利が認められる形で情報公開請求をしたいと思いますので、もう一つの手続きの方を教えていただくことは可能ですか。

E管理係長
本来であれば、例えばうちに来られて請求される方もいるんですけど、その時にはどちらで請求されるのかご説明をしているので、もちろん、ご説明はできますけれども、今、郵送で送られていますので、お話ができなかった状態なんですよね。


私は延岡市教育委員会の方へ3月28日に情報公開請求に伺ったんです。その時に、B補佐から「調べさせてください」ということで報告書に関して情報公開していただきたいと私は伝えました。そして3月29日に折り返し連絡を頂いて「その情報公開請求をすることは難しい」と言われました。

E管理係長
こちらの認識だと3月28日に情報公開請求に来られたとは捉えていないんですが。


B補佐とC指導主事とお話ししたときに私は「情報を開示していただきたい」ということでお話に上がっているんです。そして、その件について調べさせてほしいと、追って連絡します、ということで、3月29日にお電話を頂いております。

E管理係長
ちょ、ちょ、ちょっとお待ちいただけますか。すみません。(保留音が流れる)
もしもし、すみません。うちの方としては、こちらの相談が正式な情報公開請求の手続きではなくて記録を見せてほしいというご要望という事で。


いえいえ、ちがいます。報告をしました、ということで伺っていたので、その時点では報告書はできていないということを伺って、分かりましたとその日は帰りました。その会話の中で、報告書についても開示することができるかどうか確認させてくれという事を言われていたので、その次の日の3月29日に電話連絡を受け、その時に「開示することは難しい。できないであろう」ということでご回答いただいているんです。なので、私はこの方法しか思いつかないので。

E管理係長
こちらでお伝えしようと思った意図がうまく伝わっていないようにあります。申し訳ありません。まず、28日にご相談された時には報告書はまだ作成段階だったので当然そこでは開示請求はできませんよね。そこでできませんとお話ししたと思います。できたものについてはもちろん正式な情報公開請求に則って、請求はできますけれども、先程私が説明しました通り、どなたでも請求ができるものなので、個人に関する部分等については墨塗りの状態で開示することになります、ということでご説明を、こちらとしてはしたつもりなんですよ。できないという事ではなくて。


それも伺っております。そしてその後に、「難しい。総務課の方で相談しました。」ということで、ご回答いただいています。「県の教育委員会に提出する報告書を、出来上がったら見せてほしい」ということでお願いに上がっていたんですけれども、その時点で報告書はできていないと伺いました。そして、「できたとしてもお見せできるかどうか分かりません。できるかどうか確認して連絡します。」と伺いました。

E管理係長
それで29日に電話があったという事ですね。すみません。それで先程私がご説明した通りのところに戻るんですけれども、うまく意図が伝わっていないようで申し訳ないんですが、お見せすることは、もちろん請求が無いとできません。当事者である方にもきちんと情報公開の請求をしていただいて、開示することになります。多くが個人情報なので、墨塗になったり、見せられないものが出てきますというような伝え方をしたとこちらは考えております。それでよろしいですか。


私も今、仕事を少し抜けさせてもらって電話に出ているものですから、代理人を松永法律事務所の方にしていただいているので、そちらにもう一度ご説明頂いてよろしいですか。

E管理係長
…わかりました。こちらのご説明の意図としては情報公開請求を使われるよりも、個人情報保護条例を使われた方がまあ、当然その…ご本人に関する部分は開示できますので、どうされますか?ということでお聞きしたいのです。


そうします。

E管理係長
あ、そうされるということでよろしいですか。


はい。

E管理係長
手続き的には、煩雑になると申し訳ないので、今の頂いている請求書を代わりにして、こちらで一応その、代替えと言うか、個人情報保護条例で請求した形にさせてもらってもよろしいですか。


はい、そうしてください。

E管理係長
はい。そして、もう一つだけ説明させてください。個人情報保護条例で請求をされる場合にはご本人の情報は開示してしまいますので、ご本人が請求していることを、確認をしないといけないんですよ。なりすましてされると大変なので。その場合に、ご本人であることの証明を例えば、免許証のコピーを送っていただくなり、していただくことはできますか。


はい、分かりました。
どちら宛に、いつまでに郵送しますか。

E管理係長
そうですね。ほぼ本人であることは間違いないと思っていますので、開示決定日が13日になりますので、前日くらいまでに届くように、少なくともですね。届くようにして頂ければありがたいと思います。


宛先は総務課でよろしいですか。

E管理係長
はい、総務課で結構です。



はい。

E管理係長
じゃあもう、代理人さんとお話はしなくてもよろしいですよね。今、ご了解いただきましたので宜しくお願いいたします。


宜しくお願いいたします。

E管理係長
ありがとうございます。


はい、失礼いたします。

前回の延岡市教委訪問時、その場にいなかったE係長がとにかく自分たちの認識で私を納得させようとすることに違和感しかなかった。

また、私が代理人弁護士へ連絡するよう伝えた途端、急に情報開示請求と個人情報開示請求の話に戻し、弁護士に連絡するのをあからさまに避ける様子が伝わった。

悔しさと腹立たしさで爆発しそうだった。

2017年6月20日付で一部開示された事故報告書が手元に届いた。


2017年3月30日付で延岡市教委から宮崎県教委に提出された事故報告書には、延岡市教育委員長より北部教育長へ宛てた「職員の事故について(進達)」の中に、第一小学校校長より延岡市教育委員会宛ての「職員の事故について(報告)」があり、「職員の事故報告書」内に事実と異なる記載、疑問に感じる記載がいくつもあった。

7.事故もしくは違反事実の概要
◆6行目 「場所を探したが、近くに適当な場所がなく、教頭の貸家が近くだったこともあり」とあるが A教頭が私を呼び出した飲食店は、A教頭の自宅より徒歩1~2分、100mちょっとの距離で、A教頭は自宅周辺の地理を十分把握していた。また、「コンビニに立ち寄った」際、コンビニ周辺に日曜日も営業している飲食店が数店舗ある。3月は送別会シーズンで当時はコロナ禍の前だ。

A教頭が事実として申し立てた内容に疑うべき不審な点があることは教育委員会が両者の申し立てに基づいてきちんと検証すれば歴然としていた。また森先生、田中先生に聴き取りを行えば、A教頭の犯行が計画的で、日頃の言動から浮かび上がることがあったはずだ。

13.教育長所見
◆6行目 「信頼の回復に努めたい」とあるが、延岡市教育長の「信頼回復に努めたい」という言葉は、誰に対する信頼回復なのか理解に苦しんだ。なぜなら「県が行う停職、懲戒処分等ではないので新聞、ニュース報道等はされない」処分を下し、被害を申告した私に一切のサポートを行わなかったからだ。A教頭と教育委員会以外、誰も知らない文書訓告を決定したこの事件で、誰に対して失った信頼の回復なのか分からなかった。

一緒に送られてきたA教頭の事実申立書と延岡市教委の聴取内容はすべて黒塗りになっていて、内容は全く分からなかった。

一部開示された事故報告書からは、教育委員会の聴き取りが曖昧で、事実を基にしていない事実認定だったことがはっきりとした。教育委員会は、私の申し立てた内容よりもA教頭の申し立てた内容を「事実」として認定したのだ。

2017年7月12日、延岡市教委に対し代理人である松永弁護士から処分に関する質問を送った。
セクシュアルハラスメント事案として宮崎県教委に報告しているとのことだったが「県職員の懲戒処分を有するのは県教委であり、県教委は懲戒処分の基準に照らして懲戒処分を行う。県教委が市教委による報告を受け、当事者への事情聴取を行い、事故の事実認定を行った上で、過去の事例との比較等をし、該当職員に対する処分、又は措置の量定を決定するが、本件は、県教委からの措置依頼を受け、市教委が有する服務監督権の範囲内で措置を行ったものなので、最終的な決定は県教委によって行われており、市教委は当該措置に至った理由を述べる立場にない」とのことだった。

2017年8月29日、宮崎県教委に対し、同じ内容で松永弁護士から質問を送った。
「処分等については延岡市教委の報告書を基に、宮崎県教委が当事者へ再度聴き取り、総合的に勘案した結果、懲戒処分には至らないとの判断を行った。尚、市教委からはA氏に対し懲戒処分以外では最も重い「文書訓告」の措置を行ったと報告を受けている」とのことだった。

市教委、県教委から返ってきた「A教頭の行為に対する処置の理由」に関する回答からは、教育委員会の誠実さなど少しも感じられなかった。総合的に勘案した結果?懲戒処分以外では最も重い措置?そんな言葉は何の判断材料にもならなかった。

職場においてあらゆる権利を脅かされることのない「教育長と校長、また教育委員会それぞれの課長等々」の判断は、性被害を受けたという非常勤講師の申告した事実申立ての内容より、出世を絶たれるであろう管理職への同情が反映されているとしか思えなかった。また、組織としてなるべくおおごとにせず終わらせられるよう都合の良い解釈で事実認定を行ったとしか思えなかった。

教育委員会として適正な判断・処分を行ったのか、教育委員会の体質が健全だといえるのか、A教頭がどんな内容を事実として申し立てたのか、私はただ、本当のことが知りたかった。

当事者への適切な聴き取り、事実確認と認定、今後の対応や処分の報告、被害を繰り返さないための手立てを考え、それを組織として実行するという約束を得ることでしか、私がこの事件に折り合いをつけることはできないと思った。A教頭が校長にならず、退職まで昇格しないはずだということなんて何の慰めにもならなかった。私はただ、A教頭に加害行為にきちんと向き合い、反省し、代償として自分で責任を取ってほしかった。

そもそも、A教頭の行為は管理職として以前に、教育者として資質があるのかと問いただしたかった。そしてA教頭を管理職のまま据え置き、事実をうやむやにする今回の教育委員会の判断。文書訓告という内々の注意に留めたことに闇の深さを感じた。    

たくさんの子どもたちの成長に携われることの喜びと感謝をもって、誠心誠意働くことができた小学校での教員生活は私の誇りだった。それなのに私がA教頭から受けた性被害と教育委員会からの対応は本当に「教育に携わる人たち」が行うことなのだろうかと、信じられない気持ちと虚しさで胸が押しつぶされた。そして私だけでなく、家族までをも苦しめていることがとても辛く、悔しく、絶対に許せなかった。

当事者として真実が知りたいという思いをかわされ続け、問題が何ら解決されないまま時間が過ぎる。学校の仕事も失い、ひどい挫折感に打ちのめされ、生活が、心が壊れていく。私の日常は「教育に携わる人たち」によってあっという間に狂わされ、将来に対する希望どころか当たり前の毎日を失っていった。

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