詩ことばの森(53)「水の匂いが」
水の匂いが
水の匂いがしている
風もないのだけど
砂利を踏んだ音を
せせらぎに似ていると
昔のきみだったら
そう言うだろう
小鳥があるいている
羽があるのだけど
乾いた川砂に生えた
枯草のかすかな足音を
昔のぼくだったら
聞きわけたかもしれない
この川をまっすぐゆくと
おおきな街へとつづいていて
大きな煙突のある工場を横切って
さして新しくもない
ぼくたちの通った高校があったね
いまはすっかり
舗装された川べりの歩道を
きみが見たらどう思うだろうなんて
どうしようもないことを
かんがえながら あるいている
秋空の晴れた日
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