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詩ことばの森(153)「薔薇の庭」

薔薇の庭

古い石の椅子に
やわらかな午後の光が
落ちている森
長い沈黙に耐えてきた
苔むした庭で
あの人の影が
枝と枝との隙間を
たった今 通り過ぎて行った
初夏の匂い

ただ一人きりで
座りながら詩人の思いは
野ばらの道を歩んでいく
人ではない存在となって
花のアーチをくぐり抜ける

花は地に落ちていく
風がそれを拾おうとするたび
くりかえし 花びらを揺らしつづけて
けれども 美しい魂は
青く澄んだ空に
すっかり溶けてしまった

(森雪拾)

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